本文へスキップします。

H1

ユサコニュース詳細

USACO News:詳細

2004/06/30:第143号学術論文の検索における最近の動向:Googleの進出
 

学術論文の検索における最近の動向:Googleの進出
 学術ジャーナルアグリゲーター大手Ingentaは本年5月、ウェブ検索エンジン
大手Googleと提携し、Ingentaの保有する膨大なフルテキストデータをGoogleに
開放することで、Googleによるフルテキスト検索を可能にしたと発表した。
検索は通常のキーワード検索から行われ、検索結果はIngentaの論文アブスト
ラクトページに直接リンクされる。

 Googleは本年2月末から、Ingentaが提供する論文のタイトル、著者名、
キーワードなどの書誌情報をインデックス化し、Googleの検索システムから
Ingentaの書誌データベースの検索ができるように作業を進めてきた。これに
よりIngentaへのアクセス数は飛躍的に増加し、Ingentaによると、4月には
約5,400万件のユーザーセッション数を記録した。さらに今回、Googlebotと
呼ばれるGoogleのロボット型検索システムがIngentaのフルテキストデータ
ベースを自由に巡回できるように設定し、Googleによるフルテキスト検索を
可能にしたことで、更なるアクセス数の増加が見込まれている。

 同じく学術ジャーナルアグリゲーター大手であるExtenzaも、PDFファイルと
HTMLファイルの両方で提供しているフルテキストデータベースを近々Googleに
開放し、GoogleによるExtenza収録タイトルのフルテキスト検索を可能にすると
発表している。

 Googleは最近、新しい検索対象領域として学術論文に特に注力しており、
昨年12月には、Googleの検索結果とIEEE(米国電気電子学会)が提供するプラット
フォームIEEE Xploreとを直接リンクさせ、IEEEの書誌レコードをGoogle上にて
直接検索させるサービスを始めている。また本年4月には、出版社の垣根を
越えた学術論文の相互リンクを可能にするためのプロジェクト、CrossRefと
協力してCrossRef Searchというパイロットプログラムの提供を開始した。
当プログラムでは、提携出版社9社のコンテンツ提供サイトにGoogleの検索
ボックスを組み込んでおり、ユーザーはそこで通常のキーワード検索を行う。
Googleはその検索結果を提携出版社が提供するコンテンツのみに絞り込み、
さらに各検索結果と出版社のレコードをDOI(Digital Object Identifire)
もしくは通常のURLを介してリンクさせている。CrossRefではこのパイロット
プログラムを本年末まで行い、その間、研究者や図書館員などからのフィード
バックを募っている。

 Googleはまた、電子ジャーナルアグリゲーターや学術出版社のデータ
ベースに限らず、学術機関が独自に学術論文を集積する機関リポジトリを
検索対象とするプロジェクトを進めている。当プロジェクトに参加している
17の大学では、マサチューセッツ工科大学が開発したDSpaceと呼ばれる
ソフトウェアを利用して機関リポジトリを構築しているが、複数のリポジトリを
横断検索するシステムは存在していなかった。当プロジェクトでは、各コン
テンツに付与されているメタデータをもとにGoogleが一括検索を行うことで、
複数のリポジトリから関連データをまとめて抽出することが可能となる。

 このように、学術情報をターゲットとしたGoogleの進出は著しく、今後も
Googleの検索システムを用いた多くのプロジェクトが進められると思われる。
しかし、検索対象領域が広がったとしても、Googleの検索はキーワードのみを
用いた網羅的な検索に過ぎないため、これらのGoogleの活動により、研究活動に
おける資料収集の方法がすぐさま大きく変化することはないと思われる。ただし、
従来までは到達できなかった領域を検索可能にし、今まで埋もれていた学術論文が
多くの研究者に見出される可能性を高めたGoogleの功績は大きく、今後のさらなる
活動が注目される。

<参考資料>
・Ingentaホームページ:
http://www.ingenta.com/

・Extenzaホームページ、プレスリリース:
http://marketing.extenza-eps.com/resources_pressrel.htm

・IEEEニュースページ:
http://www.ieee.org/portal/index.jsppageID=institute_level1&TheCat=2202

・CrossRefホームページ:プレスリリース
http://www.crossref.org/01company/pr/press20040428.html

・DSpaceホームページ:
http://www.dspace.org/

ユサコニュース一覧に戻る