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2004/07/31:第144号Open Accessジャーナルと著作権:Creative Commonsの活動
 

Open Accessジャーナルと著作権:Creative Commonsの活動
近年、学術出版界において注目を集めているトピックに、Open Access
がある。Open Accessとは、購読料の支払いを要求することなく、誰にでも
無料アクセスを提供するオンラインジャーナルの出版モデルでのことで、
多くの場合、論文執筆者が投稿料を支払うことで、出版費用を賄っている。

 Open Accessのもう一つの特徴に、著作権の取り扱いがある。従来の出版
モデルでは、全ての著作権は出版社が保有しており、論文に掲載されている
図表を転用する際にも出版社の許可が必要である。これに対しOpen Access
ジャーナルの多くは、執筆者に著作権を帰属させている。

 例えば、Open Accessジャーナルの先駆け的存在の一つであるPublic
Library of Science(PLoS)では、論文の最後部に、「著作権は、特記事項
がない限りCreative Commons Attribution Licenseのもとに保護されて
います。」と記されており、原著作者のクレジットを表示さえすれば、複製、
頒布、展示などを認めている。

 Creative Commonsとは、米国スタンフォード大学のローレンス・レッシグ
教授が提唱した著作物の利用ライセンスのことで、「著作権を過剰に保護する
風潮が、科学技術の創造的発展を妨げている」という考えから、オンライン上で
公開している著作物において、あらかじめ利用者の権利を明示することで著作権
問題をクリアにしようとする活動である。Creative Commonsは、著作物の
基本的な利用条件として、「Attribution:著作権の帰属先を明示する義務」、
「Noncommercial:商業目的での利用の禁止」、「No Derivative Works:
派生作品の禁止」、「Share Alike:オリジナルの利用条件を他者と共有する
義務」の4つを掲げ、その組み合わせによりライセンスの内容を表現している。

 この仕組みは、文献に限らず、ウェブ上で配信する音楽や映像など、あらゆる
著作物に対応可能である。この場合、著作物の作成者は、Creative Commonsの
ウェブサイトからその組み合わせを自由に選び、そこで生成されるメタデータを
HTMLに挿入し、ロゴを貼り、ライセンス要約にリンクを張るだけである。その
著作物の利用者は、ロゴをクリックするだけで利用条件を簡単に確認できる。
また、メタデータを挿入しているため、例えば、特定のテーマに関する複製可能な
文献のみを検索することも可能となる。

 オンラインジャーナルが一般化されてからは、論文や図表などの転用、複製が
電子的に容易に行えるため、著作件の問題は一層表面化している。しかし、従来の
ように学術論文の著作権を過剰に保護してしまうと、科学技術の発展において
大きな足かせになりかねない。出版社が論文の著作権を有している場合、通常、
著作権マークの脇に「(出版社によって)All rights reserved」と表示されて
いるが、Creative Commonsのロゴには、「(著者によって)Some rights
reserved」と表示されている。Open Accessジャーナルが今後さらに普及し、
研究論文を無料公開することで科学技術の発展を図るためには、Creative
Commonsのような著作権・利用条件の標準化が、より重要になると思われる。


<参考資料>

・Public Library of Scienceホームページ:
http://www.publiclibraryofscience.org/

・Creative Commonsホームページ:
http://creativecommons.org/

・クリエイティブ・コモンズ・ジャパン、ホームページ:
http://www.creativecommons.jp/

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