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2004/10/31:第147号英国における、学位論文電子化の取り組み
 

英国における、学位論文電子化の取り組み
 インターネットの急速な普及に伴い、様々な学術情報がオンライン上で
公開されている。多くの学術出版社はジャーナル論文や学会議事録などを
オンライン上で提供しており、また、学術領域別に特化した書誌データベース
が開発されたことで、特定の学術情報の検索・アクセスも容易に行えるように
なった。近年は、出版社やデータベースプロバイダーが作成する学術情報に
限らず、大学の修士・博士論文を電子化し、オンライン上で公開する試みが
盛んに行われている。

 英国のJoint Information Systems Committee(JISC)は、大学などの
機関リポジトリシステムの開発やスタンダード化を目的とした、Focus on
Access to Institutional Resources (FAIR) Programmeの一環として、
電子学位論文(Electronic Theses and Dissertations: ETDs)の集積・提供
システムを開発するプロジェクトを進めている。英国図書館は、マイクロ
フィルムや複写サービスを通して最近の博士論文を一般公開しているが、
古い博士論文や修士論文などは提供されておらず、学位論文フルテキストを
電子的に提供する必要性が唱えられていた。これを受けJISCは、現在進行
している3件のe-thesesプロジェクトを支援、評価し、英国の学術機関に
おける学位論文リポジトリ構築システムのスタンダード化にあたっている。

 その内の1つ、エジンバラ大学が運営するプロジェクト、「Theses Alive!」
では、メタデータ通信プロトコル、OAI-PMHに準拠した複数の公開ソフトウェア
を比較検討し、学位論文のメタデータを公開・集積するのに最も適したシステム
の構築に取り掛かっている。当プロジェクトは、すでに検索機能を搭載した
パイロットサイトを公開しており、同大学で出版された学位論文や研究論文を
PDFで提供している。また、すでに出版されている学位論文の電子化もあわせて
進めており、1800年代に書かれた学位論文のサンプルとして、1881年に同大
医学部を卒業したコナン・ドイルの博士論文を公開している。

 日本においては、学位論文の電子化はほとんど行われておらず、多くの
学位論文が図書館の棚に眠ったまま放置され、その内容の検索も困難である
のが現状である。今後、機関リポジトリ構築におけるスタンダード化が進み、
学位論文が重要な学術情報の一部として認識されるよう期待される。

<参考文献>
・JISCホームページ:FAIRプログラム
http://www.jisc.ac.uk/index.cfmname=programme_fair

・JISCホームページ:Electronic Thesesプロジェクト
http://www.jisc.ac.uk/index.cfmname=project_rgu_etd

・エジンバラ大学Theses Alive!ホームページ
http://www.thesesalive.ac.uk/

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