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2006/10/30:第168号ユーザ主導のサービスの利用:COinSとRSSに見る共通性
 

ユーザ主導のサービスの利用:COinSとRSSに見る共通性
主に学術情報サービスにおいてユーザやリンク元の状況(コンテクスト)に応じたリンク
ナビゲーションを実現する「機関向けリンクリゾルバー」は国内においても導入が本格化する兆しを
みせてきた。一方,医中誌WebやJDreamIIがOpenURLに対応したことで国内の情報提供者側における
認識も徐々に高まってきている。

 このようなリンクモデルを成立させるためには,リンクの起点となる情報サービスが,
ユーザが所属する機関のリンクリゾルバーに対しOpenURLによる書式でリンク元の文献情報を
送信することが必要だが,主要な学術情報ベンダーはこのような仕組みを実装してきた。
情報サービスは,どのユーザからの情報をどのリゾルバーに送信するか判断する必要があるが,
通常は,リゾルバー導入機関の管理者から利用機関のIPレンジとリゾルバーのアドレスの通知を
受けることで解決してきた。

 このような手法で定着してきたOpenURLのリンクモデルに,新たな発想が加わろうとしている。

 COinS(Context Objects in Spans)と言う仕組みでは,情報ベンダー側が文献情報をHTMLのタグに記述し,リンクリゾルバーのアドレスは,ユーザ側のブラウザに記述する方法をとる。
利用者がリゾルバーを選択する手段を得ることになるので,ユーザ主導のリンクモデルとも
考えられる。

 これによりユーザは「機関内で購読しているサービスか」「機関内からのアクセスであるか」などに
関係なく広範囲のサービスでOpenURLを活用することができるようになる。特にログインの必要がない
フリーの検索サイトでは,COinSの利用は自然な解決策である。また,検索サイトや管理者の側にも
メリットがある。リンクリゾルバーのアドレスをユーザごとに記録・提供するような機能を実装する
必要がなくなり,管理者がリゾルバーのアドレスを登録する手間がいらなくなるのである。

 これと似た関係を持つものとして,近年よく対比されるサービスが「メール・アラート(SDI:Selective
Dissemination Information)」と「RSSフィード(Webフィード)」である。当然のことであるが,
メール・アラートを受け取るには,ユーザは自分のメールアドレスを検索サイトに登録しなければ
ならない。一方,検索サイト側はユーザのメールアドレスを厳重に管理し,また定期的にメールを
配信する機能を実装する必要がある。近年,プライバシーや個人情報保護の重要性が叫ばれる中,
ユーザは安易にメールアドレスを公開することを避ける傾向があり,また検索サイト側でも個人情報を
管理するためのコストが無視できないものになってきている。

 これに対しRSSフィードでは,ユーザは個人情報の公開なしに購読の開始も停止も自由に行うことが
できる。検索サイト提供側にとっても,ユーザのメールアドレスを管理する必要がなくなり,実装も
比較的簡単であるという利点がある。しかし一部の検索サイトでは,適切な利用統計の採取に困難を
来すことや,マーケティング活動のために個人情報を収集したいという思惑もあり,RSS化を歓迎しない
向きもある。また,RSSがまだメールほどは広く浸透していないサービスであるという点も問題である。

 COinSも比較的新しい技術であり,RSSの利用にRSSリーダーと呼ばれるソフトウェアが必要に
なるのと同様,COinSに対応したブラウザの拡張機能が必要であるため,普及にはかなりの時間を
要すると思われる。今後サービスの知名度が向上することで,これらユーザ主導のサービスが
学術情報界にどのようなインパクトを与えるかが注目されるところである。

<参考資料>
・増田豊:OpenURLとS・F・X.カレントウェアネス2002;274:CA1482
http://www.ndl.go.jp/jp/library/current/no274/doc0008.htm
・OpenURL COinS:A Convention to Embed Bibliographic Metadata in HTML
http://ocoins.info/
・COinS for the Link Trail - Library Journal
http://www.libraryjournal.com/article/CA6344742.html
・RSS - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/RSS

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