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2010/06/30:第207号 図書資料の現物送付をめぐるNISOの取り組み
 

図書資料の現物送付をめぐるNISOの取り組み

 電子ジャーナルのビッグディールなどにより,文献複写を対象とするILLの件数は概して減少傾向にある一方,米国では現物の貸借における配送件数が増加しているという。2009年11月に発表された米国情報標準化機構(NISO)のプレスリリースによると,およそ77%の学術図書館が国家もしくは州の資料共有(リソースシェアリング)ネットワークに参加していると報告されている。

  現物貸借の対象は主に書籍であり,DVD/VHS,音楽CDが続く。これらの賃借の拡大に比例して配送システムの利用も増加し,手作業の仕分けやラベル貼りをはじめとする図書館スタッフの労力,追跡不可能な送付手段,コスト負担などの問題も大きくなっている。

 このような状況下,NISOは図書資料の現物配送に関するベスト・プラクティスを発展させることを目的に,2009年 11月に新たなワーキンググループ“Physical Delivery Working Group”を立ち上げた。
同ワーキンググループは,1. 物的移動(梱包・ラベル貼り・自動化・アイテムの受領),2. 異なる配送業者間の受渡し,3. 国際配送(特有の問題:税関・保健・梱包・ラベル貼り),4. 利用者への直接配送(手段),5. マネジメント事項(管理組織・役割・関連事項・ポリシー・紛失/ダメージ時の方針・ガイドラインの保存記録・契約・通信手段・評価・料金),6. 配送の減少(理由・手段)を主なポイントに関連情報の収集を完了し,現在は2010年8月に発表予定のドラフト版推奨案の作成に取り掛かっている。

 推奨案作成にあたり2010年5月に開催されたNISO主催のWebinarでは,“The Galecia Group”の設立者で資料の配送作業などの分野を専門とするコンサルタントLori Bowen Ayre氏の基調講演が行われた。
同氏によると,図書資料の送付は毎年15-20%増加しており,その要因としては,図書館ソフトウェアの
発達(利用者主導型リクエスト,インターフェイス機能の向上など),図書館利用者からの高い期待(個人向けサービスなど), 図書館サービスの目標(Google,Amazonとの競合や地域社会の中心的存在としての役割)などが挙げられるという。逆に,減らす要因としては,オンラインリソースのさらなる拡大,デジタル著作権制限の緩和,ポータブルデバイスの機能向上などが挙げられた。また,今後の図書館デリバリーの展望を変容させる要因として,1. オープンウェアの積極的な採用による図書館間の協力の促進とワークフロー管理,2. 仕分け作業を機械化する,3. ICタグ(RFID)を活用した配達追跡などのデリバリー支援などが挙げられた。

 意外なようだが,Ayre氏によると,図書資料の現物送付は今後も増加する傾向にあるという。
背景としては,今まで蓄積された所蔵物の資産が大きいことと,それらの目録が簡単に検索できる環境が要因と推定される。
 上述したNISOワーキンググループは,2010年8月にドラフト版推奨案を発表,2010年9月より2011年3月までをコメント収集期間とし,2011年5月に最終案を完成させる予定である。

・NISO:Physical Delivery Working Group
http://www.niso.org/workrooms/physdel
・NISO5月12日Webinar:It’s in the Mail: Improving the Physical Delivery of Library Resources
http://www.niso.org/news/events/2010/resourcesharing/


KBART:第1段階ガイドラインを複数の機関が正式承認

 英国逐次刊行物グループ(UKSG)と米国情報標準化機構(NISO)は,KBART(The Knowledge Bases And Related Tools)が2010年1月に発表した“Phase I Recommended Practice(NISO RP-9-2010)”を,
米国物理学協会(American Institute of Physics),Ex Libris,OCLC,Serials Solutionsの4機関が正式に承認したことを発表しました。

 Phase I Recommended Practiceは,コンテンツプロバイダーとknowledge baseデベロッパー間における,時宜を得た正確なメタデータ交換のための実用的な提言を含む推奨案です。プレス・リリースでは,上述の機関以外にも,学術情報サプライチェーンを取り巻く多くの主要機関が,現在,KBARTの承認に向けて取り組んでいることを伝えています。

 KBARTワーキンググループは,現在第2段階(Phase II)に進行中です。

・NISOプレス・リリース
http://www.niso.org/news/pr/viewitem_key=cc5c9d1d27373ff30902d094d2ff7193037ee922
・KBARTニュース
http://www.uksg.org/news/kbartmay10
・本誌2010年新春号記事「UKSG / NISO.:KBARTガイドラインをリリース」
https://www.usaco.co.jp/u_news/detail.html?itemid=87&dispmid=605
・本誌181号トピックス「knowledge baseをめぐる動向」
https://www.usaco.co.jp/u_news/detail.html?itemid=64&dispmid=605

JSTOR:カレントタイトルの契約体系“Current Collection”を発表

コアな学術ジャーナルのバックナンバーを電子的に提供するJSTORは,2011年より新たに展開する
カレントタイトル収録プロジェクト“Current Scholarship Program”の契約体系として,“Current Collection”を発表しました。

 Current Collectionでは,2011年に19の出版者より176タイトルがリリースされる予定です。
各タイトルは,JSTORが従来提供してきたアーカイブコレクションに準じた分野別コレクションで提供されるほか,タイトル別契約,全タイトル一括契約,特定コミュニティを対象としたパッケージ契約が可能となります。また,カレントタイトルとアーカイブタイトルのセット契約も可能です。

 Current Collectionの価格は出版者により設定された各タイトルの価格で構成され,JSTORは追加料金を設定しません。価格の詳細は今夏に発表される予定です。

 なおJSTORは,Current Scholarship Programで提供されるタイトルと各機関の購読タイトルの重複を
調査するHolding Comparison Serviceを無料で提供しています。ご希望の機関は,ISSN情報を含んだ
購読タイトルリストをテキストまたはエクセルファイルにて,弊社または以下のアドレスまでお送りください。
 participation@jstor.org

 詳細については弊社までお問い合わせください。

・JSTORホームページ 関連情報ページ
http://www.jstor.org/page/info/about/news/announcements/2010.jsp#MayA
・弊社JSTORサイト
http://www.usaco.co.jp/products/jstor/index.html
・本誌第198号記事「JSTOR:カレントタイトル収録のお知らせ」
https://www.usaco.co.jp/u_news/detail.html?itemid=82&dispmid=605
・本誌第204号記事「JSTOR:Current Scholarship Programへの参加出版者が増加」
https://www.usaco.co.jp/u_news/detail.html?itemid=89&dispmid=605

Nature Publishing Group:Nature Communications創刊と無料公開のお知らせ

ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)は,2010年4月にオンライン限定の総合科学ジャーナル“Nature Communications”を創刊し,2010年9月30日まですべてのコンテンツを無料公開しています。

 Nature Communicationsは,生物科学・化学・物理科学の全領域を対象に,質の高い査読論文を出版
することを目的とし,Nature姉妹誌がカバーしていない研究分野からの論文投稿も推奨する,オンライン限定ジャーナルです。現在までに32本の論文記事が掲載され,日本人著者の論文も複数掲載されています。

 また同誌は,購読モデルの論文と著者が出版費用を負担するOpen Accessの論文を収録したハイブリッドジャーナルです。著者がOpen Accessを選択した場合,クリエイティブ・コモンズのライセンスにより第三者に論文の使用を許諾でき,二次的著作物の作成を許可することも可能です。

詳細は弊社までお問合せください。

・NPG:Nature Communications(掲載論文はこちらから閲覧可能です)
http://www.nature.com/ncomms/index.html
・NPG: Nature Communicationsについて
http://www.natureasia.com/japan/ncomms/about/

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