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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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2023/07/21

ATM依存性のCHD7リン酸化は、放射線被ばく胎児における形態形成とカップルしたDSBストレス応答を制御している

論文タイトル
ATM–dependent phosphorylation of CHD7 regulates morphogenesis-coupled DSB stress response in fetal radiation exposure
論文タイトル(訳)
ATM依存性のCHD7リン酸化は、放射線被ばく胎児における形態形成とカップルしたDSBストレス応答を制御している
DOI
10.1091/mbc.E22-10-0450
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the Cell Volume. 34, Issue. 5
著者名(敬称略)
野田 朝男 他
所属
放射線影響研究所 分子生物科学部

抄訳

放射線で生じるゲノム損傷のうち、修復が困難なDNA二重鎖切断 (DSB)は細胞に重大な影響を及ぼします。このような損傷を持つ細胞に特徴的な遺伝子発現を調べる過程で、転写因子CHD7 (Chromodomain Helicase DNA binding protein 7) がATM依存的にリン酸化されていることを今回見つけました。CHD7はユビキタスな転写因子ですが、胎児発生期においては、神経冠細胞から目、口、耳や脳などの神経感覚器官や心臓の形態形成を司る転写因子として機能します。この形態形成転写因子タンパク質が放射線によりリン酸化され、ゲノム中の修復が困難なDSB部位に集積するという結果から、形態形成期には転写とカップルしたDSB修復機構が存在するのではないかと思われます。形態形成・器官形成という不可逆でcriticalな生物過程を遂行するために、この転写因子は自身がDSB修復機能も持つように進化してきたのではないでしょうか。              CHD7のハプロ不全は胎児に広範な先天性形成異常1 (congenital malformation) を誘発する事が知られています。放射線でも胎児の形態形成異常2が誘発されます。胎児の放射線被ばくにおいて、CHD7がDSB修復反応に優先的に動員された場合は、形態形成活性の一時的な低下(ハプロ不全のような状況)が予想されます。これが放射線誘発胎児形態形成異常の原因のひとつになっているのではないかと私たちは考えています。つまり、軽度・中程度のゲノム損傷の場合、CHD7は傷の修復と神経冠形態形成を同時にうまくやりくりして危機的状況を乗り越えることができるが、もしもゲノム損傷が多すぎると、形態形成がおろそかになり先天性形成異常が起こりやすくなる、ということと理解します。 注1:以前は「奇形」と言う言葉が使われました。 注2:胎児は「被ばく一世(胎内被ばく)」です。遺伝影響(親の生殖細胞被ばくによる二世影響)とは区別して考える必要があります。

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2023/07/18

カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスORF67.5は、ターミナーゼ複合体構成因子として機能する

論文タイトル
Kaposi’s Sarcoma-Associated Herpesvirus ORF67.5 Functions as a Component of the Terminase Complex
論文タイトル(訳)
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスORF67.5は、ターミナーゼ複合体構成因子として機能する
DOI
10.1128/jvi.00475-23
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology June 2023  Volume 97  Issue 6  e00475-23
著者名(敬称略)
祝迫 佑紀 藤室 雅弘 他
所属
京都薬科大学 細胞生物学分野

抄訳

カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)は感染者の免疫不全時にカポジ肉腫やB細胞性リンパ腫を引き起こすヒトヘルペスウイルスである。単純ヘルペスウイルスやヒトサイトメガロウイルス等の他のヘルペスウイルスと異なり、KSHVのカプシド形成はほとんど解明されていない。特に、複製後の前駆体ウイルスDNAのプロセッシング(ターミナルリピート部分での切断)に関わると推測されているKSHVのターミナーゼ複合体は不明な点が多い。他のヘルペスウイルスとの相同性から、KSHVターミナーゼ複合体はKSHVがコードするORF7、ORF29、ORF67.5遺伝子産物によって構成されると推測される。我々は以前、ORF7欠損KSHVは、正常なウイルス産生を行うことができず、さらに新規形態の未成熟カプシドを形成することを報告し、これを”Soccer ball-like capsid”と名付けた。本論文では、ORF67.5欠損KSHVもまた、”Soccer ball-like capsid"を形成することを証明した。さらに、ORF67.5はターミナルリピートの切断、感染性ウイルスの産生、およびORF7とORF29の相互作用の増強に必要であった。ORF67.5には、ヒトヘルペスウイルスホモログ間で高度に保存された領域がいくつかある。これら保存領域はウイルス産生に必要であり、ORF67.5とORF7との相互作用にも必要であることを明らかにした。これらの結果はAIにて予測したKSHVターミナーゼ複合体構造モデルによっても支持された。本論文は、ORF67.5がKSHVターミナーゼ複合体の形成と前駆体ウイルスDNAのターミナルリピート部位での切断に必須であることを示す初めての報告である。

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2023/07/11

アミノ酸源の添加が最少培地におけるShewanella oneidensis MR-1株の発酵増殖を促進する

論文タイトル
Supplementation with Amino Acid Sources Facilitates Fermentative Growth of Shewanella oneidensis MR-1 in Defined Media
論文タイトル(訳)
アミノ酸源の添加が最少培地におけるShewanella oneidensis MR-1株の発酵増殖を促進する
DOI
10.1128/aem.00868-23
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology 27 June 2023 e00868-23
著者名(敬称略)
池田壮汰 高妻篤史 他
所属
東京薬科大学生命科学部生命エネルギー工学研究室

抄訳

Shewanella oneidensis MR-1株は環境細菌の多様なエネルギー代謝能力を解明するためのモデルとしてよく研究されており、金属酸化物やフマル酸などの様々な電子受容体を利用できることが知られている。一方、本株は乳酸発酵に必要な遺伝子を備えているにも関わらず、電子受容体を含まない最少培地中では糖を発酵して増殖することができない。本論文ではなぜMR-1株が糖発酵により増殖できないのかを明らかにするために、電子受容体(フマル酸)存在下と非存在下でのトランスクリプトームを比較した。その結果、電子受容体非存在下(発酵条件)では、細胞増殖に必要な炭素代謝(TCAサイクルやアミノ酸合成等)に関与する多くの遺伝子の発現が抑制されていた。また、最少培地中にアミノ酸源(トリプトンやアミノ酸混合液)を添加した培地では、本株が糖発酵により増殖できることも明らかになった。以上の結果から、MR-1株は電子受容体が欠乏した際にエネルギー消費を最小化するために環境中からアミノ酸を取り込むように代謝を制御しており、そのために最少培地における発酵増殖が阻害されていることが示唆された。

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2023/07/10

免疫細胞の浸潤研究に適した血液脳関門構成内皮細胞の分化誘導

論文タイトル
Differentiation of Human Induced Pluripotent Stem Cells to Brain Microvascular Endothelial Cell-Like Cells with a Mature Immune Phenotype
論文タイトル(訳)
免疫細胞の浸潤研究に適した血液脳関門構成内皮細胞の分化誘導
DOI
10.3791/65134
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (195), e65134
著者名(敬称略)
松尾欣哉 西原秀昭 他
所属
山口大学大学院医学系研究科臨床神経学講座
山口大学医学部 神経・筋難病治療学講座

抄訳

血液脳関門 (blood-brain barrier:BBB) の破綻は種々の神経疾患でみられる病理所見だが,患者由来BBB検体の入手が困難であることが研究の障壁であった.我々はヒト人工多能性幹細胞 (human induced pluripotent stem cell:hiPSC)から脳微小血管内皮細胞様細胞を誘導する手法を開発し,患者由来BBBモデルを用いた研究を可能にした.まずWnt/β-cateninシグナルを活性化しhiPSCを内皮前駆細胞に分化させ,磁気ビーズを用いた細胞選別でCD31陽性細胞を採取した.一定の割合で含まれる平滑筋様細胞を複数回の継代によって分離し,BBBの特性をもった純粋な内皮細胞を得た.本モデルは,ヒト初代培養細胞同等のバリア機能を有し,既存のhiPSC 由来 in vitro BBB モデルと比べ,形態および発現遺伝子が高純度な内皮細胞の性質を有することと,適切な接着分子が発現している利点があり,BBBと免疫細胞との相互作用の研究に有効なモデルである.

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2023/07/07

ラット間における腹部異所性心移植の手術手技の改良と新規大動脈弁逆流モデルの開発

論文タイトル
Modified Heterotopic Abdominal Heart Transplantation and a Novel Aortic Regurgitation Model in Rats
論文タイトル(訳)
ラット間における腹部異所性心移植の手術手技の改良と新規大動脈弁逆流モデルの開発
DOI
10.3791/64813
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (196), e64813
著者名(敬称略)
辻 重人 嶋田 正吾 他
所属
東京大学医学部附属病院 心臓外科

抄訳

50年以上前からマウスやラット間における腹部異所性心移植が報告されており、様々な改良がなされてきた。今回我々は、移植手技において心筋保護を強化する改良を行うことで、移植心の機能を維持し、初学者でも高い成功率を達成できる手術手技を確立した。①心臓摘出前にドナーの腹部大動脈を切開・瀉血してドナー心の負荷軽減を図ること、②心筋保護液をドナー心の冠動脈に注入すること、③吻合操作中にドナー心の持続的な局所冷却を行うこと、の3点が手技のポイントである。
加えて、右頚動脈からカテーテルを挿入し、エコーガイド下で大動脈弁を穿刺する従来の大動脈弁逆流モデルとは異なる、腹部異所性心移植を用いた新たな大動脈弁逆流モデルを開発した。ドナー心摘出後に腕頭動脈からガイドワイヤーを挿入し、大動脈弁を穿刺して大動脈弁逆流を作成した上でレシピエントへ移植する方法である。既存のモデルと比較して穿刺手技が容易であり、また大動脈弁逆流を作成したドナー心はレシピエントの循環に直接影響しないため、既存のモデルと比較してより重度な大動脈弁逆流モデルが作成可能と考えている。

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2023/07/06

Alicyclobacillaceae科の新属新種の土壌細菌Collibacillus ludicampi

論文タイトル
Collibacillus ludicampi gen. nov., sp. nov., a new soil bacterium of the family Alicyclobacillaceae
論文タイトル(訳)
Alicyclobacillaceae科の新属新種の土壌細菌Collibacillus ludicampi
DOI
https://doi.org/10.1099/ijsem.0.005827
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 73, Issue 5
著者名(敬称略)
城島 透、森 美穂
所属
近畿大学 農学部 環境管理学科

抄訳

新規な中程度好熱性、好気性細菌TP075株は、日本の運動場の土から単離された。TP075株は桿菌であり、好気性で芽胞を形成し、水酸化カリウム法によりグラム陽性と判定された。増殖の最適pHは4.0-5.0、最適温度は47-50℃であった。ドラフトゲノム配列から、GC含量は46.5%と判明した。主要な脂肪酸は、分岐鎖脂肪酸(iso-C15:0, anteiso-C15:0, and iso-C16:0)であった。16SリボソームRNA遺伝子による分子系統解析の結果、TP075株は、Alicyclobacillaceae科の細菌であり、Effusibacillus consociatus CCUG53762T (92.6%)、およびTumebacillus soil CAU11108T (92.5%)に対して最も高い類似性を示した。ゲノム解析の結果、TP075株は、Effusibacillus pohliae DSM 22757に対して最も高い類似性を示し、average amino acid identity (AAI)は62.7%、average nucleotide identity (gANI)は70.86%であった。以上の結果より、TP075株は、新属の新種であり、Collibacillus ludicampi、基準株はTP075株(JCM34430=TBRC15186)として提案された。

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2023/07/06

イメグリミンとメトホルミンの併用療法はdb/dbマウスにおいて膵β細胞保護作用を示す

論文タイトル
Protective Effects of Imeglimin and Metformin Combination Therapy on β-Cells in db/db Male Mice
論文タイトル(訳)
イメグリミンとメトホルミンの併用療法はdb/dbマウスにおいて膵β細胞保護作用を示す
DOI
10.1210/endocr/bqad095
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology, Volume 164, Issue 8, August 2023, bqad095
著者名(敬称略)
西山 邦幸, 白川 純 他
所属
群馬大学 生体調節研究所 代謝疾患医科学分野

抄訳

本研究では、糖尿病治療薬であるイメグリミンとメトホルミンとの併用療法の、2型糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスにおける効果を検証した。イメグリミンとメトホルミンとの併用療法により、インスリン分泌のグルコース応答性回復、膵β細胞増殖促進、および膵β細胞アポトーシス抑制が認められた。膵島の網羅的遺伝子発現解析により、イメグリミンとメトホルミンの併用は、アポトーシス関連遺伝子群の発現を制御することが示された。db/dbマウスの単離膵島や膵β細胞株に直接イメグリミンとメトホルミンを添加しても、同様にアポトーシスが抑制された。以上より、イメグリミンとメトホルミンの併用は、直接作用により膵β細胞保護効果を有し、膵β細胞機能や量を維持する2型糖尿病治療に有用であることが示唆された。

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2023/07/03

細胞の成長ゆらぎがクローン集団をより速く成長させる

論文タイトル
Noise-driven growth rate gain in clonal cellular populations
論文タイトル(訳)
細胞の成長ゆらぎがクローン集団をより速く成長させる
DOI
10.1073/pnas.1519412113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS March 22, 2016 vol. 113 no. 12 3251–3256
著者名(敬称略)
橋本幹弘 若本祐一他
所属
東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系

抄訳

同じ遺伝情報をもつクローン細胞を同じ環境に置いたとしても、個々の細胞のさまざまな性質(表現型)には、しばしば大きなばらつきが観察されます。このような「表現型ゆらぎ」は遺伝情報と異なり子孫細胞に安定に継承されないため、これまでその進化的意義については十分に理解されてきませんでした。今回のこの論文では、大腸菌のクローン細胞集団を1細胞レベルの精度で100世代以上の長期にわたって連続観察可能な計測システムを開発し、これを用いることで、細胞レベルの成長ゆらぎが大きいほど、それら細胞によって構成される細胞集団がより速く成長できることを定量的に明らかにしました。この結果は、表現型ゆらぎの明確な進化的意義を示すとともに、細胞集団の成長能が細胞の平均的な成長能と定量的には必ずしも一致しないという興味深い事実を実験的に確認するものです。さらにこの論文では、異なる環境条件下での成長ゆらぎの間に成立する新たな定量的法則も発見し、この法則に基づいて、成長ゆらぎの情報から各生物種の成長率の原理的上限を知ることができる可能性も示唆しています。

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2023/06/23

骨形成不全症2型の乳児に対するパミドロネート治療の有効性

論文タイトル
Cyclic intravenous pamidronate for an infant with osteogenesis imperfecta type II
論文タイトル(訳)
骨形成不全症2型の乳児に対するパミドロネート治療の有効性
DOI
10.1136/bcr-2022-252593
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.16 Issue 5
著者名(敬称略)
深堀 響子 長崎 啓祐
所属
新潟大学医学部 小児科学教室

抄訳

論文要旨:骨形成不全症(OI)2型は、周産期致死型と言われていた最重症型で、生後1ヶ月までに呼吸不全などにより90%以上が死亡する。現在、OIに対して骨折頻度の減少および骨痛の改善目的に、パミドロネート治療が行われるが、OI 2型に対する使用例はほとんど報告がなく、その安全性や有効性など明らかではない。我々は、OI 2型の乳児に対してパミドロネートの静脈内投与を行い、長期生存している例を報告する。在胎17週に胎児の大腿骨短縮を指摘され、在胎28週におこなった胎児CTの所見からOI 2型が疑われていた。出生後、呼吸困難のため気管内挿管を行い、人工呼吸器管理を行った。COL1A1のヘテロ接合性バリアント(c.1679G>T,p.Gly358Val)が確認され、OI 2型と診断した。生後41日目にパミドロネートの静脈内投与を開始し、投与量を調整しながら1ヶ月毎に投与した。生後7ヶ月で抜管に成功し、高流量鼻カニューレを使用して呼吸状態は安定している。生後12ヶ月現在、出生後の新規骨折はなく、NICUで在宅に向けて管理中である。OI 2型に対する集学的な呼吸器管理やパミドロネート治療により生命予後が改善する可能性がある。

患者の視点(両親の声) 私たちは、出生前に致死性の骨系統疾患と診断されたとき、混乱と不安に襲われました。この診断で元気に生活している人はいるのか」「頭や両上下肢の形が良くなる可能性はあるのか」「出産する母体にリスクはないのか」等々、医療スタッフに質問をたくさんしました。しかし、私たちは医師に何を言われても妊娠を継続すると決めていたので、中絶という選択肢はなかったです。羊水検査はリスクを伴うので希望しませんでしたし、その結果が私たちの決断を左右することはないとわかっていました。妊娠中、赤ちゃんが生きているかどうか常に心配でした。何が起こってもいいように準備はしていましたが、同時に彼の生命力を信じたいという気持ちもありました。 出産後、赤ちゃんが無事に生まれてきてくれて本当によかったと思いました。赤ちゃんに触れることができたことも嬉しかった。私たち二人とも、心肺蘇生法を含む最善かつ最も積極的な管理を望みました。出産後、お母さんのお腹の中で骨折したと聞かされ、私たちはショックを受けました。まるで私たちのせいのようでした。パミドロネート治療については、正直、副作用が怖かった。しかし、治療をしなければ何も良くならないので、治療を受けさせました。現在、骨が強くなっているのを実感しており、励みになっています。今は、病気に関係なく、兄と同じようにたくさんの愛情を注いであげたいと思っています。大きな信念と希望を持って、私たちは彼の生きる意志を信じています。

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2023/06/20

キチン添加土壌から分離されたメチオニン要求性のキチン分解新奇細菌Lysobacter auxotrophicusのビタミンB12要求性とゲノム解析

論文タイトル
Physiological and genomic analyses of cobalamin (vitamin B12)-auxotrophy of Lysobacter auxotrophicus sp. nov., a methionine-auxotrophic chitinolytic bacterium isolated from chitin-treated soil
論文タイトル(訳)
キチン添加土壌から分離されたメチオニン要求性のキチン分解新奇細菌Lysobacter auxotrophicusのビタミンB12要求性とゲノム解析
DOI
10.1099/ijsem.0.005899
ジャーナル名
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻号
Volume 73, Issue 5
著者名(敬称略)
齋藤明広、道羅英夫、浜田盛之、森内良太、小土橋陽平、森浩二
所属
静岡理工科大学 理工学部 物質生命科学科

抄訳

キチンは,真菌の細胞壁に含まれる直鎖状の多糖です。土壌にキチンを添加すると,真菌を病原とする植物病が低減されることが報告されてきました。キチン添加によって増加するキチン分解細菌が病害低減効果の一要因と考えられています。前報では、キチン添加土壌から分離したキチン細菌Lysobacter sp. 5-21aTがメチオニン (Met) 要求性を示すことを報じました(Iwasakiら2020)。本論文では,5-21aTがビタミンB12(VB12) 要求株であることを示すとともに、その遺伝的背景を探るために行ったゲノム解析の結果を報告しています。また、近縁株とのゲノム相同性の比較や,化学分類学的,表現型および系統学的データに基づいて,5-21aTがLyobacter属の新種であることを提唱し,Lyobacter auxotrophicus と命名しました。VB12要求性が5-21aTの近縁株にも共通した性質であること,VB12依存性Met合成酵素の遺伝子しか持たないために5-21aTのMet合成にはVB12が必要であると考えられること,また,5-21aTがVB12合成の上流 (コリン環合成) 経路の遺伝子を持っていないためにVB12de novo合成できないことがわかりました。 

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