抄訳
腫瘍微小環境(TME)におけるエフェクターCD8陽性T細胞と制御性T細胞のPD-1発現バランスがPD-1阻害治療の臨床効果を予測することをこれまで我々は報告した。しかし、このPD-1発現バランスを決定する要因は不明なままであった。我々は実際の患者検体を解析し、MYC増幅腫瘍や転移性肝腫瘍などの解糖系の亢進した腫瘍において、制御性T細胞がエフェクターCD8陽性T細胞よりも優位にPD-1を高発現することを見出した。低グルコース環境下では、制御性T細胞は乳酸トランスポーターを介して乳酸を活発に吸収してNFAT1の核内移行を促進し、PD-1発現が高まった。その一方で、エフェクターCD8陽性T細胞によるPD-1発現は低下した。解糖系の亢進した腫瘍ではPD-1阻害治療によりPD-1陽性制御性T細胞は活性化し治療抵抗性を示した。解糖系の亢進した腫瘍の産生する乳酸が、PD-1発現の亢進を介してTMEにおけるTreg細胞の機能に対するチェックポイントとなることが示唆された。