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2024/04/04

オートファジーは保存期間中のシロイヌナズナ種子の胚乳の品質を管理し発芽能力を維持する

論文タイトル
Autophagy maintains endosperm quality during seed storage to preserve germination ability in Arabidopsis
論文タイトル(訳)
オートファジーは保存期間中のシロイヌナズナ種子の胚乳の品質を管理し発芽能力を維持する
DOI
10.1073/pnas.2321612121
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol. 121 No. 14
著者名(敬称略)
篠崎 大樹 吉本 光希 他
所属
明治大学 農学部生命科学科 環境応答生物学研究室
著者からのひと言
種子が保存中に受けるダメージに適応するための新規機構を明らかにし、発芽能力が失われる要因について新たな一面を見出しました。発芽能力を保ったまま種子を長期保存する技術は、農業的に重要なテクノロジーです。高い発芽活性を有した種子を保存しておくことは、食糧危機への対策として有効です。また、多種多様な種子を保存しておくことは遺伝資源の確保に繋がり、新規品種作出の際に貴重な研究リソースとなります。本研究の成果をさらに発展させることで、種子を長期間保存する技術開発につながることが考えられ、地球と人類社会への貢献が期待されます。

抄訳

植物の種子が長期間の保存の後にも発芽するためには、保存中に受けるストレスに対処する必要があります。本研究では、細胞内自己成分分解系「オートファジー」が種子の発芽能力維持に寄与していることを明らかにしました。長期間保存した種子の発芽率を調べ、オートファジー不能植物 (atg変異体) の種子は、野生型に比べ発芽能力が大幅に低下することを見出しました。興味深いことに、この発芽出来なくなったatg変異体の種子において、周囲を覆う胚乳と種皮を除去すると、その胚は成長できることが明らかになりました。続いて、保存期間中に胚乳でオートファジーが行われていることが判明しました。また、長期保存したatg変異体種子の胚乳は8割以上が死細胞であったのに対し、野生型ではその値が1割未満にとどまっていることが明らかになりました。オートファジーは保存中の種子の胚乳細胞を正常な状態を保てるようにメンテナンスすることで、発芽能力の維持に貢献していると考えられます。

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