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2024/04/22

福島第一原子力発電所における放射性元素を含む滞留水中の細菌群集構造解析

論文タイトル
Microbiome analysis of the restricted bacteria in radioactive element-containing water at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station
論文タイトル(訳)
福島第一原子力発電所における放射性元素を含む滞留水中の細菌群集構造解析
DOI
10.1128/aem.02113-23
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Vol. 90, No. 4
著者名(敬称略)
藁科 友朗、金井 昭夫 他
所属
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
慶應義塾大学 先端生命科学研究所
著者からのひと言
2号機原子炉建屋トーラス室に由来する高い放射線物質を含む滞留水を例に取り、細菌の種類を判別できる16S rRNAの塩基配列を解読することで、同環境に生息する細菌の種類と割合を網羅的に明らかにすることができました。その結果、トーラス室水は近隣の海などに比べて細菌の多様性は低いものの、わずかながらも限定された細菌が生息する環境であることが明らかとなりました。また、放射線に強い耐性を有するような細菌は見出されませんでした。これらの細菌の群集としての特徴を理解することで、ダメージを受けた原子炉を含め原子力施設の解体を考える上での安全管理や廃棄物処理の効率化への活用が期待されます。

抄訳

本研究では、福島第一原子力発電所の原子炉建屋地下の半閉鎖的環境に約9年間滞留したと考えられるトーラス室水に生息する細菌叢の同定および、その生息環境の解析を行った。トーラス室水 (1×109 Bq 137Cs/kg)は、東京電力により最下層部から0.3 - 1mの間 (TW1)と最下層部 (TW2)の2地点から採取された。TW1ではチオ硫酸塩酸化細菌であるLimnobacter属を、TW2ではマンガン酸化細菌であるBrevirhabdus属を中心とする細菌群集が確認され、両者を構成する主要な属は類似していた。これらの細菌群の多様性は福島近隣の海水のそれと比較して低く、トーラス室水から同定された細菌属の約70%が金属腐食に関連するものであった。また、トーラス室水は自然環境である海洋性細菌群と人工環境であるリアクターなどに生息する細菌群との混合環境あることが推定された。

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