Ex Libris社は2018年2月8日付のプレスリリースで,ランカスター大学,アイオワ大学,マイアミ大学,オクラホマ大学,シェフィールド大学の5機関を開発パートナーに迎え,研究の実践を支えるEsploroと呼ばれる「研究サービスプラットフォーム」を開発することを正式発表した。同社は学術図書館が関与可能な新たな役割を模索する中で,研究支援機能の重要性に早期から着目し数年前から利用機関に示してきた。 2017年9月にロシアで開催された世界的なユーザ会IGeLU(International Group of Ex Libris Users)の年次会でも,Esploroの構想と開発計画を発表していた。
Ex Libris社のWebサイトには,既にEsploroの製品紹介ページが用意され,機関における学術研究の卓越性の向上,研究活動の可視性と効率,コンプライアンスの向上という大きなミッションが掲げられている。 また,製品カタログや同社が数年前から行ってきたマーケットリサーチの知見を記した白書などが入手できる。製品概要として記載されている主なポイントは以下の通り。
・従来の機関リポジトリよりも対象とするデータの範囲を広げ,研究で生まれる全てのデータを自動的に収載する。メタデータ情報を強化し学術的なサービスや機関ポータルからの発見性を向上させる。
・研究関連部門が個別に保守しているデータや管理業務を,できる限り自動化し,機関全体を通じ統一されたワークフローに置き換えることで効率化を実現する。
・地域や世界におけるオープンアクセス,APC(論文出版加工料)のトラッキングや,データ管理計画(DMP)提出などに関する義務・方針に適合したワークフローと,遵守状況のモニター機能を提供し,遵守率向上を目指す。
・業績,活動,略歴などを掲載した研究者データベースを自動作成する。
・Ex Libris社のクラウドベース図書館サービスプラットフォーム(LSP)であるAlmaと連携する。Almaの購読に追加するクラウドベースサービスとして提供され,Almaの統合的ワークフロー,リンキング,分析などの機能を活用する。
・適切な指標や研究,自機関,他機関におけるベンチマークを使い研究のインパクトを計測する。
・オープンなAPIにより,図書館やキャンパスシステムとの連携を実現する。
Esploroの利用のためには2012年にリリースされたAlmaの導入が必要となるが,前述のIGeLU 2017年の会合の時点で契約機関が1,000を超えたことが発表され,その後も順調に増えている。国内でも早稲田大学図書館と慶應義塾大学メディアセンターが共同で2019年度の稼働を目指し準備を進めている。Almaと連動する製品としては,教育リソースの管理サービス「Leganto」が2015年にリリースされ利用機関が拡大している。
Esploroは2019年中のリリースが予定されている。Ex Libris社が今まで培ったノウハウと開発パートナーのインプットを結集した,研究活動に関わる機関・個人にとって有益な製品となることを期待したい。
<参考>
・Esploro Webサイト:
https://www.exlibrisgroup.com/products/esploro-research-services-platform/
・小誌第245号 APCと学術図書館(2013年11月)
https://www.usaco.co.jp/u_news/detail.html?itemid=133&dispmid=605