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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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日本人論文紹介:一覧

2025/07/31

楽観的な人たちは“同じように”思い描く:エピソード的未来思考における共有された神経表象 New

論文タイトル
Optimistic people are all alike: Shared neural representations supporting episodic future thinking among optimistic individuals
論文タイトル(訳)
楽観的な人たちは“同じように”思い描く:エピソード的未来思考における共有された神経表象
DOI
10.1073/pnas.2511101122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.30
著者名(敬称略)
柳澤邦昭 他
所属
神戸大学大学院人文学研究科

抄訳

楽観主義とは、未来に対して肯定的な期待を抱く傾向であり、心身の健康や社会的つながりにポジティブな影響を与える心理的資源とされている。本研究では、2つのfMRI実験を通じて、楽観性の高さが未来を思い描く際の脳の働きにどのように関与するかを検討した。参加者に、感情価の異なる未来の出来事を、自分自身または配偶者の身に起こることとして想像してもらい、その際の脳活動を計測した。その結果、楽観性の高い人同士は内側前頭前野(MPFC)において類似した神経活動パターンを示す一方で、楽観性の低い人はより多様なパターンを示すことが明らかになった。さらに、MPFCの活動パターンに着目した分析から、楽観的な人ほどポジティブとネガティブな出来事を明確に区別して想像する傾向が示唆された。これらの結果は、楽観性の心理的・社会的適応の背景に、共通した認知構造が存在する可能性を示しており、楽観性の神経基盤に関する新たな理解につながる知見である。

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2025/07/31

サイトカラシンDによるアクチン重合阻害と切断の分子機構:TIRF顕微鏡と結晶構造解析による解明 New

論文タイトル
Microscopic and structural observations of actin filament capping and severing by cytochalasin D
論文タイトル(訳)
サイトカラシンDによるアクチン重合阻害と切断の分子機構:TIRF顕微鏡と結晶構造解析による解明
DOI
10.1073/pnas.2502164122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.29
著者名(敬称略)
三谷隆大 藤原郁子 武田修一 他
所属
長岡技術科学大学 大学院工学研究科 物質生物系
著者からのひと言
長年の疑問だった「サイトカラシンDがどうやってアクチンの伸び縮みを止めているのか」を、世界で初めて分子レベルで明らかにできました。1本のアクチン線維をリアルタイムに観察し、原子分解能で構造変化を捉えられたのは非常に感慨深く、今後の薬剤開発や基礎研究に役立つことを期待しています。

抄訳

サイトカラシンDはアクチンフィラメント(線維)の重合を阻害する薬剤として広く使われていますが、その作用機構は分子レベルでは未解明でした。本研究では、TIRF顕微鏡、結晶構造解析、分子動力学シミュレーションを組み合わせて、サイトカラシンDの濃度に応じた3段階の作用を明らかにしました。低濃度では線維中の2本のプロトフィラメントの一方に結合する“ゆるい”キャップとして作用します。中濃度では2分子が強固に結合して線維端を安定化させ、高濃度では線維を切断します。1.7Å分解能で捉えた構造変化は、アクチン制御における適切な薬剤使用への指針となる知見を提供します。

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2025/07/31

日本の臨床分離NAGビブリオ株のゲノム解析事例 New

論文タイトル
Genomic insights into clinical non-O1/non-O139 Vibrio cholerae isolates in Japan
論文タイトル(訳)
日本の臨床分離NAGビブリオ株のゲノム解析事例
DOI
10.1128/spectrum.00175-25
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum 2025 Jun 24:e0017525.
著者名(敬称略)
小林 洋平 鈴木 仁人 柴山 恵吾 柴田 伸一郎 他
所属
名古屋市衛生研究所微生物部
著者からのひと言
本研究では、日本国内で報告されたNAGビブリオ感染事例に対し、地方衛生研究所が主体となって起因株のゲノム解析を行い、感染源が複数存在する可能性を示唆するとともに、病原性関連遺伝子の特徴を明らかにしました。こうした事例について得られた知見を発信していくことは、公衆衛生の現場から社会への貢献につながる重要な取り組みです。

抄訳

Non-O1/O139型コレラ菌(NAGビブリオ)は、腸管感染症や敗血症などを引き起こす病原細菌であり、近年は地球温暖化などの影響によって環境中での増殖が促進され、感染拡大への懸念が高まっています。一方で、国内におけるNAGビブリオ感染症は感染症法に基づく病原体サーベイランスの対象外であり、臨床分離株の分子疫学情報は限られていました。本研究では、2020年に名古屋市で報告された3例のNAGビブリオ感染症に由来するコレラ菌株についてゲノム解析を行い、世界各地で過去に報告された臨床分離株との比較解析を実施しました。系統解析の結果、3株は遺伝的に多様であり、短期間に複数の汚染源から散発的に発生した可能性が示唆されました。さらに、細菌毒素、付着因子、III型およびVI型分泌機構関連遺伝子など病原性関連遺伝子の多様性などを明らかにしました。本研究は、日本におけるNAGビブリオ感染事例起因株の分子疫学的特徴を明らかにし、今後の感染症対策や監視体制の構築に資する重要な知見を提供するものです。

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2025/07/28

子宮腺筋症における体細胞変異プロファイルと染色体異常 New

論文タイトル
Mutation profile and chromosomal abnormality in adenomyosis
論文タイトル(訳)
子宮腺筋症における体細胞変異プロファイルと染色体異常
DOI
10.1530/REP-25-0132
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Reproduction Volume 170: Issue 2
著者名(敬称略)
須田 一暁 中岡 博史 他
所属
新潟大学医学部産科婦人科
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 医療情報解析学講座 データサイエンス分野
著者からのひと言
私たちの研究グループはヒト子宮内膜の基底層付近に網目状構造を呈する上皮組織が存在することを発見し、その形態から地下茎構造と名付けました。また、一見正常な子宮内膜組織において、がん関連遺伝子に体細胞変異を獲得した細胞が子宮内膜の三次元空間において増殖するメカニズムに地下茎構造が関与していることを明らかにしました。本研究で同一変異クローンに由来する子宮腺筋症病変が子宮の広範な領域に観察されることを示しました。この背景に、私たちが発見した地下茎構造が関与している可能性があります。研究をさらに進め、子宮腺筋症の発症機序解明につなげたいと考えています。

抄訳

レーザーマイクロダイセクションを用いた選択的組織採取と次世代シーケンシング技術を用いたゲノム解析によって、子宮腺筋症上皮において、KRAS、PIK3CA、ARID1A、FBXW7などのがん関連遺伝子の体細胞変異や一番染色体長腕のコピー数増加が高頻度に存在することが分かった。これらのゲノム異常が子宮腺筋症の発生および進展に関連すると考えられる。また、複数の腺筋症病変および正常子宮内膜の間で変異クローンの関係を精査した。同一症例の子宮腺筋症と正常子宮内膜上皮で体細胞変異の共有が認められたことから、子宮腺筋症は子宮内膜上皮を起源として発生することが分かった。同一変異クローンに由来する腺筋症病変が子宮の広範な領域に増殖しているケースも観察された。さらに、同一症例において複数の異なる変異クローンに由来する腺筋症病変が認められたことから、腺筋症はオリゴクローン性に増殖するユニークな特徴を有する疾患であることが分かった。

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2025/07/25

ニューロメジンU欠損によりラットのテストステロンの日内リズムが乱れ、輪まわし活動が減少する

論文タイトル
Neuromedin U Deficiency Disrupts Daily Testosterone Fluctuation and Reduces Wheel-Running Activity in Rats
論文タイトル(訳)
ニューロメジンU欠損によりラットのテストステロンの日内リズムが乱れ、輪まわし活動が減少する
DOI
10.1210/endocr/bqaf102
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology, Volume 166, Issue 8, August 2025, bqaf102
著者名(敬称略)
大塚 舞 相澤 清香 他
所属
岡山大学大学院環境生命自然科学研究科(理学部生物学科)分子内分泌学研究室
著者からのひと言
本研究は、ペプチドホルモン「ニューロメジンU」がオスのテストステロン日内リズムと運動意欲を制御することを世界で初めて示しました。ホルモンとモチベーション行動の関係を解明する新しい知見であり、やる気や意欲の低下に関わる精神疾患研究にも新たな展望を与える成果です。

抄訳

本研究では、ニューロメジンU(NMU)の生理的役割を明らかにするため、NMUノックアウト(KO)ラットを解析した。オスのNMU KOラットでは、野生型(WT)と比較して回し車を走る「輪まわし活動」が有意に減少していた。一方で、飼育ケージ内での全体的な活動量には変化はなかった。WTラットのオスでは血中テストステロン濃度が日内で変動し、朝に高く夜に低下していたのに対し、NMU KOラットでは1日のピークがみられず、日内リズムが消失していた。NMU KOラットにテストステロンを慢性的に投与すると、輪まわし活動はWTと同程度に回復した。また、NMU KOラットでは下垂体における黄体形成ホルモンの発現や、LH産生細胞の大きさが低下していた。脳において、NMUは下垂体隆起部に高発現し、その受容体は第三脳室上衣細胞層のタニサイトに強く発現していた。以上より、NMUはテストステロンのリズム調節を介して、自発的な運動行動、モチベーション行動の制御に関与する新規機能が明らかになった。

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2025/07/24

中性子構造解析と時分割X線構造解析を用いてNudix加水分解酵素ヒトMTH1の基質結合および反応機構を詳細に解明した

論文タイトル
Neutron and time-resolved X-ray crystallography reveal the substrate recognition and catalytic mechanism of human Nudix hydrolase MTH1
論文タイトル(訳)
中性子構造解析と時分割X線構造解析を用いてNudix加水分解酵素ヒトMTH1の基質結合および反応機構を詳細に解明した
DOI
10.1073/pnas.2510085122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.29
著者名(敬称略)
平田 啓介、藤宮 佳菜、中村 照也 他
所属
熊本大学大学院生命科学研究部(薬学系)機能分子構造解析学講座
著者からのひと言
これまでに合成されてきたほとんどのMTH1阻害剤は、MTH1のAsp119とAsp120に結合するため、本研究で決定した高精度なMTH1構造を基にした新たな抗がん剤の創出につながることが期待されます。また、Nudixファミリーにおいては、金属イオンの関与する酵素反応機構が長年議論されていますが、今回の研究により、MTH1 は3 つの金属イオンが関与して反応を触媒することが明らかになりました。

抄訳

ヒトMTH1は、活性酸素種によって生じた酸化ヌクレオチドを広い基質特異性により加水分解して除去する酵素であり、抗がん剤の標的としても注目されている。これまでの研究から、MTH1の基質・阻害剤の結合には、基質結合ポケット内のアミノ酸残基のプロトン(水素原子)の付加や脱離、すなわちプロトン化/脱プロトン化状態が重要であると示唆されていたが、水素原子を直接観察することの難しさから、その状態を実験的に証明するには至っていなかった。本研究では、水素原子の位置を高感度で検出可能な中性子構造解析を用いることでMTH1の基質結合ポケット内の水素原子を可視化し、Asp119とAsp120のプロトン化状態の変化が広範な基質・阻害剤結合を可能にしていることを実験的に初めて実証した。さらに、時分割X線構造解析によりMTH1の加水分解反応過程を動的に観察し、MTH1が属する大規模な加水分解酵素群であるNudixファミリーに共通すると考えられる反応機構を提案した。

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2025/07/23

グルココルチコイド療法を新規に開始する患者における、ロモソズマブ、デノスマブ、リセドロネートの治療効果の比較

論文タイトル
Comparison of Efficacy of Romosozumab With Denosumab and Risedronate in Patients Newly Initiating Glucocorticoid Therapy
論文タイトル(訳)
グルココルチコイド療法を新規に開始する患者における、ロモソズマブ、デノスマブ、リセドロネートの治療効果の比較
DOI
10.1210/clinem/dgae810
ジャーナル名
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Volume 110, Issue 8, e2778-e2786
著者名(敬称略)
川添 麻衣, 南木 敏宏 他
所属
東邦大学 医学部 内科学講座膠原病学分野(大森)
著者からのひと言
これまでに我々は、グルココルチコイド開始後早期にWntシグナル抑制因子であるsclerostinが増加することを報告し、ROMOがGIOPに有効であると期待していました。本研究では、GIOP におけるROMOの有効性を、既存治療薬2剤とのランダム化比較試験で明らかにしました。本研究結果は、ROMOが今後のGIOPに対する治療選択肢の一つとなるエビデンスになると考えています。

抄訳

近年、骨形成および骨吸収におけるWntシグナルの関与が解明され、Wntシグナルの抑制因子であるsclerostinに対する抗体製剤(ロモソズマブ; ROMO)が上市されたが、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症(GIOP)に対する有効性は明らかではない。そこで、プレドニゾロン(PSL)換算15mg/日以上を新規に開始する膠原病患者を対象とし、骨粗鬆症治療薬をROMO、デノスマブ(DMAb)、リセドロネート(BP)に無作為に割り付け、有効性を比較した(ROMO群11例、DMAb群14例、BP群14例)。平均年齢はいずれも70歳台で、男女比や一日PSL投与量は3群に有意差はなかった。主要評価項目である12ヵ月後の腰椎骨密度のベースラインからの変化率(中央値)はROMO群で最大であった(ROMO群、DMAb群、BP群:8.6%、3.3%、−0.4%)。骨形成マーカーの低下はROMO群で最も小さく、ROMOがグルココルチコイドによる骨形成抑制に対し保護的に作用する可能性が示唆された。新規骨折の累計発生頻度はROMO群で低い傾向であった。これらの結果から、GIOPにおいてもROMOは有効であることが示された。

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2025/07/22

膀胱感染の重要因子である尿路病原性大腸菌イノシン-5’一リン酸デヒドロゲナーゼGuaBの役割

論文タイトル
Role of GuaB, the inosine-5′-monophosphate dehydrogenase of uropathogenic Escherichia coli pathogenicity: a key factor for bladder infection
論文タイトル(訳)
膀胱感染の重要因子である尿路病原性大腸菌イノシン-5’一リン酸デヒドロゲナーゼGuaBの役割
DOI
10.1128/spectrum.00221-25
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum Ahead of Print
著者名(敬称略)
下川 瑞起、平川 秀忠 他
所属
国立大学法人群馬大学 医学部医学科
著者からのひと言
尿路感染症(UTI)は、私たちにとって身近な感染症であり、全世界で年間1億人以上が罹患している。UTIの主な原因菌である尿路病原性大腸菌(UPEC)は、再発しやすく、抗菌薬の繰り返し使用によって2000年以降、薬剤耐性菌の増加が急速に進んでいます。そのため、UPECに対する新たな治療法の開発が求められています。本研究では、UPECの新たな病原因子「GuaB」を同定しました。既存の抗菌薬とは異なる作用機序を持つ新規治療標的として、薬剤耐性菌への対策に期待されます。

抄訳

本研究は、尿路感染症(UTI)の主要な原因菌である尿路病原性大腸菌(UPEC)の膀胱感染における新規病原因子の探索を目的とした。近年、様々な抗菌薬に対する耐性菌が増加しており、本菌に対する治療法の改善が求められている。本研究では、UTIマウスモデルを用いて感染時に有意に発現する蛋白質をプロテオーム解析により同定を行った。その結果、グアニル酸合成に関与するGuaB(イノシン-5′一リン酸デヒドロゲナーゼ)が膀胱感染に重要であることを発見した。GuaB欠損株は尿中での増殖と膀胱定着能が著しく低下し、尿の主要成分である尿素によってGuaB発現が促進することも明らかにした。以上の結果は、GuaBがUPEC感染の新たな治療標的となりうる可能性を示唆しており、UPEC病原性のさらなる理解と治療薬開発に貢献するものである。

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2025/07/18

D-アラニン合成系と外因性アラニンは黄色ブドウ球菌の薬剤感受性に影響する

論文タイトル
D-alanine synthesis and exogenous alanine affect the antimicrobial susceptibility of Staphylococcus aureus
論文タイトル(訳)
D-アラニン合成系と外因性アラニンは黄色ブドウ球菌の薬剤感受性に影響する
DOI
10.1128/aac.01936-24
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Vol. 69, No. 7
著者名(敬称略)
鈴木 優仁, 松尾 美樹, 坂口 剛正 他
所属
広島大学大学院医系科学研究科細菌学研究室
著者からのひと言
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は現状もっとも拡散している薬剤耐性菌であり、臨床で高頻度に使用されるβラクタム系抗菌剤への耐性を獲得している点から、厄介な存在として知られています。本研究では、MRSAに対してアラニンの供給を制限すると各種抗菌剤への感受性が高まるということを発見しました。この知見から、アラニンの供給阻害と既存の抗菌剤との併用などによる新規治療戦略に応用できる可能性があります。

抄訳

グラム陽性菌において、D-アラニンは、細胞壁ペプチドグリカンの架橋形成やタイコ酸の修飾に不可欠である。その合成はアラニンラセマーゼ(Alr)およびD-アミノ酸トランスアミナーゼ(Dat)に依存し、D/L-アラニンの取り込みはトランスポーターCycAにより行われる。本研究では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のalrdatcycA遺伝子を不活化した変異株を用いて感受性を評価した。その結果、特にalr欠損株およびcycA欠損株においてβ-ラクタム系、アミノグリコシド系、ダプトマイシンなど複数の抗菌薬に対する感受性が上昇し、菌体表層の陰性電荷が増加していた。さらに、アラニンを除去した培地では、MRSA株のβ-ラクタム系抗菌薬への感受性が著しく高まった。これらの結果は、D-アラニンの欠乏がペプチドグリカンの低架橋化および表層電荷の変化を引き起こし、抗菌薬感受性を上昇させることを示唆している。

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2025/07/17

発達中および成熟したシロイヌナズナ種子における胚乳細胞層の顕微鏡解析のための無傷組織の調整法

論文タイトル
Preparation of Intact Tissue for Microscopic Analysis of the Endosperm Cell Layer in Developing and Mature Arabidopsis Seeds
論文タイトル(訳)
発達中および成熟したシロイヌナズナ種子における胚乳細胞層の顕微鏡解析のための無傷組織の調整法
DOI
10.3791/68217-v
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (219), e68217
著者名(敬称略)
瀬田 京介 吉本 光希 他
所属
明治大学 農学部生命科学科 環境応答生物学研究室
著者からのひと言
これまで困難とされてきたシロイヌナズナ種子の胚乳細胞層の高解像度ライブイメージングに成功しました。種子の発芽メカニズムを理解するには、胚だけでなく、胚乳細胞層の生理機能にも注目することが重要です。本論文で報告した手法により、種子発芽制御の理解が一層深まると考えられます。本手法は、種子発芽研究における基礎的な科学技術の一つとして広く普及することが期待されます。さらに将来的には、本手法が種子発芽促進技術の開発に貢献し、飢餓のない持続可能な社会の実現に寄与することが期待されます。

抄訳

モデル植物シロイヌナズナの種子において、胚と種皮の間に位置する胚乳細胞層は、種子の成熟や発芽の制御に重要な役割を担っています。その生理機能を分子・細胞レベルで理解するには、顕微鏡による高解像度観察が不可欠です。しかし、胚乳細胞層は種皮の内側に存在し、種子自体も非常に小さいため、組織や細胞を傷つけることなく観察可能な状態で調製するのは困難でした。本論文では、発達中および成熟種子における胚乳細胞層を顕微鏡で観察するためのサンプル調整法を詳述しています。この手法では、固定や切片作製を必要とせず、標準的な実験器具(注射針、精密ピンセット、実体顕微鏡など)を用いるだけで、生きた胚乳細胞を多数観察することが可能です。本手法により、胚乳細胞層の細胞および分子レベルでの研究が一層進展し、その新たな機能の解明に寄与することが期待されます。

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