抄訳
楽観主義とは、未来に対して肯定的な期待を抱く傾向であり、心身の健康や社会的つながりにポジティブな影響を与える心理的資源とされている。本研究では、2つのfMRI実験を通じて、楽観性の高さが未来を思い描く際の脳の働きにどのように関与するかを検討した。参加者に、感情価の異なる未来の出来事を、自分自身または配偶者の身に起こることとして想像してもらい、その際の脳活動を計測した。その結果、楽観性の高い人同士は内側前頭前野(MPFC)において類似した神経活動パターンを示す一方で、楽観性の低い人はより多様なパターンを示すことが明らかになった。さらに、MPFCの活動パターンに着目した分析から、楽観的な人ほどポジティブとネガティブな出来事を明確に区別して想像する傾向が示唆された。これらの結果は、楽観性の心理的・社会的適応の背景に、共通した認知構造が存在する可能性を示しており、楽観性の神経基盤に関する新たな理解につながる知見である。