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2024/05/27

Acinetobacter baumannii の二成分制御系 PmrAB の環境応答因子および薬剤耐性化機構の解明

論文タイトル
PmrAB, the two-component system of Acinetobacter baumannii, controls the phosphoethanolamine modification of lipooligosaccharide in response to metal ions
論文タイトル(訳)
Acinetobacter baumannii の二成分制御系 PmrAB の環境応答因子および薬剤耐性化機構の解明
DOI
10.1128/jb.00435-23
ジャーナル名
Journal of Bacteriology
巻号
Journal of Bacteriology Vol. 206, No. 5
著者名(敬称略)
山田 倫暉 鴨志田 剛 他
所属
明治薬科大学 薬学部 感染制御学研究室
著者からのひと言
薬剤耐性 (AMR) 問題は,我々人類が直面している緊急の課題である.そのため,薬剤耐性に関する研究が盛んに行われており,多くの薬剤耐性因子が明らかになってきた.しかし,それら分子の本来の機能に関しては未解明な点が多い.本研究では,薬剤耐性を皮切りに,Acinetobacter baumannii の二成分制御系 PmrAB の本来の環境応答因子としての働きを明らかにすることに成功した.AMR 問題の根本的な解決には,これら分子の詳細な機能を分子生物学的に理解することが重要であると考えている.

抄訳

薬剤耐性 (AMR) 問題が,人類全体の問題になっている.コリスチンは,薬剤耐性グラム陰性菌に対する治療の最終手段として使用されている.しかし,薬剤耐性が問題となる Acinetobacter baumannii のコリスチン耐性株の出現が増加している.本菌のコリスチン耐性化は,主に二成分制御系 PmrAB の活性化変異によるリポ多糖 (LOS) の修飾である.本研究では,pmrAB 遺伝子の活性化型変異株を用いたトランスクリプトーム解析から,PmrAB の制御遺伝子群を特定した.さらに本菌の PmrAB が Fe2+,Zn2+,Al3+ の金属イオンに応答すること,センサーである PmrB の環境応答に必須な新たなアミノ酸領域を明らかにした.また,PmrAB は Al3+ などの金属イオンに反応し,LOS をホスホエタノールアミン修飾することで Al3+ 毒性の減少に寄与することも明らかにした.本研究では,A. baumanniiのPmrAB による薬剤耐性の詳細なメカニズムとその生物学的機能を包括的に解明することで,PmrAB の薬剤耐性因子としての機能のみならず,細菌の環境認識に関する機能を明らかにできた.

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