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国内研究者論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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日本人論文紹介:一覧

2025/07/14

単純ヘルペスウイルス1型プロテインキナーゼUs3の基質特異性の変化がin vitroおよびin vivoにおけるウイルス感染に及ぼす影響 New

論文タイトル
Impact of the changes in substrate specificity of herpes simplex virus 1 protein kinase Us3 on viral infection in vitro and in vivo
論文タイトル(訳)
単純ヘルペスウイルス1型プロテインキナーゼUs3の基質特異性の変化がin vitroおよびin vivoにおけるウイルス感染に及ぼす影響
DOI
10.1128/jvi.00400-25
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Ahead of Print
著者名(敬称略)
塩さおり 加藤哲久 川口寧 他
所属
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス病態制御分野
著者からのひと言
ウイルスプロテインキナーゼ(vPK)は、多くの標的タンパク質をリン酸化することが知られていますが、それらのリン酸化をどのように精密に制御しているのか、またその制御がウイルス感染過程においてどのような意味を持つのかは、これまで明らかにされていませんでした。本研究では、vPKによるリン酸化の“fine-tuning”機構に着目し、構造予測と比較解析に基づいてこの制御機構を部分的に撹乱した変異ウイルスを設計・解析するという新たなアプローチに挑戦しました。

抄訳

単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)がコードする Us3 は、セリン・スレオニンキナーゼとして多様なウイルスおよび宿主タンパク質をリン酸化するが、これらのリン酸化がどのように精密に制御され、感染に如何に関与しているかは不明であった。本研究では、相同性検索と AlphaFold 解析を組み合わせ、キナーゼの活性調節部位とされる活性化ループ(A-loop)を推定し、A-loop 内の進化的に保存された Ala-326 を Val または Ile に置換することで、326 位における疎水性および側鎖の大きさを変化させた変異ウイルスを作製・解析した。その結果、両変異は基質ごとのリン酸化状態に選択的な変化を与え、細胞間伝播効率やマウスにおける病原性に影響を及ぼした。一連の知見から、Us3 による基質特異的リン酸化の fine-tuning が HSV-1 感染制御に重要であること、ならびにウイルスキナーゼの A-loop がその調節に関与する可能性が示された。

 

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2025/07/14

脳内のダニ媒介性脳炎ウイルスを中和する血液脳関門透過型抗体の開発 New

論文タイトル
Development of blood-brain barrier-penetrating antibodies for neutralizing tick-borne encephalitis virus in the brain
論文タイトル(訳)
脳内のダニ媒介性脳炎ウイルスを中和する血液脳関門透過型抗体の開発
DOI
10.1128/msphere.00184-25
ジャーナル名
mSphere
巻号
mSphere Ahead of Print
著者名(敬称略)
福田 美津紀 好井 健太朗 他
所属
長崎大学 高度感染症研究センター 研究部門 ウイルス生態研究分野
著者からのひと言
中枢神経系に感染するウイルスに対して、いかにして抗ウイルス薬を脳内に届け、有効に作用させるかは、治療法開発における大きな課題でした。本研究では、血液脳関門(BBB)を通過する分子に着目し、それを抗ウイルス抗体と融合させることで、脳内に侵入したウイルスを中和できることを初めて実証しました。これは、感染症治療にとどまらず、今後、さまざまな神経変性疾患への応用が期待されるものです。

抄訳

ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)は重篤な中枢神経症状を引き起こすフラビウイルスの一種で、現在有効な治療法は存在しません。本研究では、中枢神経系に侵入したTBEVを排除することを目的に、血液脳関門(BBB)を通過可能な抗体の開発を行いました。BBBを透過する性質を持つ狂犬病ウイルス由来のペプチドを融合させた中和抗体は、in vitroおよびin vivoのモデルにおいてBBBを通過し、脳内のTBEVに対して中和活性を示しました。特に、ウイルスが脳に侵入した後に末梢から投与しても治療効果が認められた点は、TBE治療法開発における重要な知見です。本研究は、脳標的型抗ウイルス抗体療法の可能性を初めて示したものであり、今後の中枢神経感染症治療の発展が期待されます。

 

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2025/07/04

呼吸筋表面筋電図の取得と半自動解析

論文タイトル
Acquisition and Semi-Automated Analysis of Respiratory Muscle Surface Electromyography
論文タイトル(訳)
呼吸筋表面筋電図の取得と半自動解析
DOI
10.3791/67157-v7
ジャーナル名
Journal of Visualized Experiments(JoVE)
巻号
J. Vis. Exp. (215), e67157
著者名(敬称略)
Antenor Rodrigues 松村 海 他
所属
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
社会福祉法人致遠会 サンハイツ
著者からのひと言
呼吸筋EMGの強さ,タイミングの評価においてEMG信号の取得・計測から信号解析まで,簡便に行う手法を概説している.本法は人為的な解析に比べて,60倍以上の速さで呼吸筋EMGの信号処理ができ,評価者の主観ではなく客観的な指標を提唱する.本法は臨床において吸気負荷と呼吸筋の働きに関するメカニズムに関しての洞察を深めることに有用であると考える.

抄訳

呼吸困難等の呼吸器症状の病態を理解するために,呼吸駆動(呼吸中枢からの指令によって,呼吸運動)を評価することが望ましい.呼吸駆動の評価法の1つに,呼吸筋の筋電図(electromyography: EMG)があげられる.呼吸筋EMGの強度は筋収縮の強さや動員される筋線維数を反映し,EMGのタイミングは吸気流の生成に対しての筋活動の開始や収束を示す.EMGの強度やタイミングは,呼吸負荷がかかるような呼吸器疾患の病態を把握する上で,呼吸筋の協調運動や呼吸中枢からの抑制信号を理解する上で重要となる.本論文では,4つの呼吸筋EMGの計測(皮膚処理,EMG電極貼付)と解析(EMG信号のフィルタリングと変換,吸気流量に対しての筋活動の開始や収束の同定法)について述べる.健常男性を対象に,漸増吸気閾値負荷試験を行い,本法を検証した結果,吸気負荷が高いほど横隔膜以外の呼吸筋活動の開始が早く,活動持続時間は長かった.また,吸気負荷がかかった状態における呼吸筋EMGのタイミングの変化は,EMG振幅の増加と相関が見られた.本法は臨床において呼吸筋活動を定量化し,正常状態および吸気負荷がかかった状態における呼吸筋の運動制御戦略に関する知見を提唱する.

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2025/06/25

糖負荷試験負荷後1時間値は正常耐糖能者において心血管疾患や悪性腫瘍による死亡を予測する

論文タイトル
One-hour postload glucose levels predict mortality from cardiovascular diseases and malignant neoplasms in healthy subjects
論文タイトル(訳)
糖負荷試験負荷後1時間値は正常耐糖能者において心血管疾患や悪性腫瘍による死亡を予測する
DOI
10.1093/pnasnexus/pgaf179
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 4, Issue 6, June 2025, pgaf179
著者名(敬称略)
佐藤 大樹、今井 淳太、片桐 秀樹 他
所属
東北大学大学院医学系研究科 糖尿病代謝・内分泌内科学分野
著者からのひと言
本研究の結果から、糖尿病になる前の段階から食後の血糖上昇に対処することで、心血管疾患や悪性腫瘍の発症を予防し寿命を延ばすことにつながる可能性が示されました。また現在、糖負荷後1時間血糖値は糖尿病の診断基準に含まれていません。病気の発症を抑えて寿命を延ばす、つまり健康長寿を促進するためには、今後、糖尿病の診断の際に糖負荷後1時間血糖値を考慮していく必要があることも示唆されます。

抄訳

本研究では岩手県で行われている大迫研究のデータを用い、ブドウ糖負荷試験の結果を含むさまざまな検査結果の中で死亡リスクと相関するものの探索を行った。その結果、さまざまな検査結果の中で、糖負荷試験での糖負荷後1時間血糖値が死亡と強く相関することを見出した。そこで、糖負荷試験の結果を元に正常と診断された方だけを抽出して糖負荷後1時間血糖値をどの値で区切った時に死亡と最も関連するのかを調べたところ、糖負荷後1時間血糖値を170 mg/dlで区切った際に、死亡と最も強く相関することがわかった。この結果を元に糖負荷試験負荷後1時間血糖値が170 mg/dl未満群と170 mg/dl以上群で生存の経過を解析したところ、生存に顕著な差が認められ、さらに、糖負荷後1時間血糖値が170 mg/dl以上群では心血管疾患や悪性腫瘍による死亡が顕著に多いことが示された。本研究の結果から、糖負荷試験負荷後1時間値は正常耐糖能者において心血管疾患や悪性腫瘍による死亡を予測することが明らかになった。

 

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2025/06/23

安全性と抗菌治療効果を兼ね備えた非増殖性ファージの開発

論文タイトル
Development of a nonreplicative phage-based DNA delivery system and its application to antimicrobial therapies
論文タイトル(訳)
安全性と抗菌治療効果を兼ね備えた非増殖性ファージの開発
DOI
10.1093/pnasnexus/pgaf176
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
PNAS Nexus, Volume 4, Issue 6, June 2025, pgaf176
著者名(敬称略)
氣駕 恒太朗、崔 龍洙 他
所属
自治医科大学医学部感染・免疫講座細菌学部門
著者からのひと言
これまで、私たちは非増殖性ファージでは十分な抗菌効果を得るのは難しいと考えてきました。しかし本研究では、殺菌作用を持つタンパク質(バクテリオシン)を組み込むことで、非増殖性ファージによる細菌の除去効果が大きく向上することを初めて明らかにしました。今後、この新しい治療法が感染症治療への応用につながることが期待されます。

抄訳

薬剤耐性の問題が深刻化する中、安全かつ効果的な新たな抗菌戦略の開発が求められている。本研究では、安全性と治療効果を両立する新たな抗菌アプローチとして、非増殖性ファージにバクテリオシンを搭載した製剤を開発した。まず、ファージ療法の課題である制御不能なファージ増殖や体内動態の不確実性を克服するため、非増殖性ファージを基盤とするDNA導入システム「B-CAP(Bacteria-targeting Capsid Particle)」を構築した。B-CAPは、ファージのカプシドに部分的なファージゲノムを内包することで自己増殖能を持たず、野生型ファージと同様に標的細菌への遺伝子注入が可能である。T7ファージをベースとしたB-CAPでは、最大18 kbの外来DNAを搭載でき、標的細菌に長鎖DNAを導入することができる。
B-CAP単体では一細胞ごとの殺菌にとどまるため、我々は周囲の細菌も殺菌できるように、殺菌性タンパク質コリシンE1のオペロンを搭載したB-CAP_ColE1を作製した。このB-CAP_ColE1は、カルバペネム耐性大腸菌に対して、in vitroおよびin vivoの両条件で顕著な殺菌効果を示し、マウス感染モデルにおいても生存率の有意な改善が認められた。

 
ファージ製剤(B-CAP ColE1)の殺菌様式

 

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2025/06/23

父親(王)の年齢が子の将来を決める:精子のエピジェネティック変化がシロアリの社会的役割に影響

論文タイトル
Transgenerational epigenetic effect of kings’ aging on offspring’s caste fate mediated by sperm DNA methylation in termites
論文タイトル(訳)
父親(王)の年齢が子の将来を決める:精子のエピジェネティック変化がシロアリの社会的役割に影響
DOI
10.1073/pnas.2509506122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.24
著者名(敬称略)
高田 守 松浦 健二 他
所属
京都大学昆虫生態学研究室
著者からのひと言
本研究は、精子のエピジェネティック修飾が次世代の運命を決めるという新しい視点を提示しています。

抄訳

社会性昆虫では、なぜ同じ親から生まれた子の一部が羽アリになり、他は働きアリになるのか、その仕組みには多くの謎が残っていました。本研究では、シロアリにおいて「父親(王)の年齢」が子の将来のカースト運命を左右することを初めて明らかにしました。若い王から生まれた子は羽アリになりやすく、年老いた王の子はワーカーになりやすいことが分かりました。この違いはDNA配列の変化ではなく、精子に蓄積されたDNAメチル化というエピジェネティックな化学修飾によって引き起こされていました。本研究は、昆虫における父親の年齢が次世代の社会的運命にまで影響を及ぼすことを示した、初の直接的な証拠です。

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2025/06/23

ショウジョウバエGTSF1ホモログTppによる大量のpiRNA産生は、Aubergineの局在と生殖質の形成を保証する

論文タイトル
Abundant piRNA production mediated by the Drosophila GTSF1 homolog Tpp ensures Aubergine localization and germ plasm assembly
論文タイトル(訳)
ショウジョウバエGTSF1ホモログTppによる大量のpiRNA産生は、Aubergineの局在と生殖質の形成を保証する
DOI
10.1073/pnas.2419375122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.24
著者名(敬称略)
喜納 寛野 中村 輝 他
所属
熊本大学発生医学研究所
著者からのひと言
本研究では、スクリーニングにより同定した新規母性因子Tppの解析を通じて、生殖細胞の形成とゲノム防御をつなぐ新たな仕組みを明らかにしました。Tpp(Tiny pole plasm)という名前は、変異体で生殖質(pole plasm)が小さくなる表現型にちなんで命名しました。

抄訳

生殖細胞は、卵や精子など配偶子を作る細胞種であり、世代を超えて種のゲノムを維持する必要がある。PIWI相互作用RNA(piRNA)は、過去にゲノムに侵入したトランスポゾンの情報を利用してトランスポゾンを抑制し、それによってゲノムの維持に貢献している。ショウジョウバエの卵巣では、PIWIタンパク質の1つであるAubergine (Aub) は、生殖細胞におけるトランスポゾンの抑制だけでなく、生殖質の形成と、それに続く子孫の生殖細胞系列へのpiRNAの分配にも関わる。今回我々が同定した新規母性因子Tppは、piRNA産生を促進する因子であり、Tppを欠く卵巣では、piRNAの産生が減少してしまう。piRNA減少により、Aubの生殖質への局在が著しく低下し、その結果生殖細胞の形成が不全となった。一方、Tppを各卵巣においても、ほとんどのトランスポゾンは抑制されたままであった。すなわち、生殖細胞は、トランスポゾンの抑制に必要なレベルを超える量のpiRNAが産生されたときにのみ形成される。このような巧妙なメカニズムにより、生殖質にはトランスポゾン情報を包括的にカバーするのに十分なpiRNAが集積し、子孫の生殖細胞におけるゲノムの完全性が保証される。
プレスリリースに用いたeyechtch figure

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2025/06/23

遺伝子ターゲティング効率がMsh2欠損の影響を受けるかどうかはドナーDNA中の相同領域の長さに依存する

論文タイトル
Homology-arm length of donor DNA affects the impact of Msh2 loss on homologous recombination–mediated gene targeting
論文タイトル(訳)
遺伝子ターゲティング効率がMsh2欠損の影響を受けるかどうかはドナーDNA中の相同領域の長さに依存する
DOI
10.1073/pnas.2508507122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.24
著者名(敬称略)
斎藤 慎太 足立 典隆 他
所属
横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科 分子生物学研究室
著者からのひと言
細胞のDNAを自在に改変できるゲノム編集技術はさまざまな分野で注目されており、その科学的重要性と社会的ニーズの高さは2020年のノーベル化学賞(CRISPR/Cas9)や2007年のノーベル医学生理学賞(遺伝子ターゲティングとノックアウトマウス)からも明らかです。今回の成果は、ゲノム編集やDNA修復の研究に重要な示唆を与えると考えられます。

抄訳

正確なゲノム編集(相同組換えに依存した遺伝子ターゲティング)に及ぼすミスマッチ修復の影響は40年以上明らかにされていなかった。そこで、さまざまな長さのドナーDNAベクターとさまざまな種類のヒト細胞変異株を駆使して遺伝子ターゲティング効率を調べたところ、ベクター中の相同領域が短くなるにつれミスマッチ修復タンパク質Msh2の影響を強く受けることがわかった。この現象は相同組換えを介した反応でのみ観察され、相同組換えを介さない反応(著者らが昨年発見したメカニズム;Nat. Commun., 2024)では相同領域の長さとは無関係に弱い影響を受けることもわかった。以上の結果から、遺伝子ターゲティングによる正確なゲノム編集において相同領域の短いドナーDNAベクターを使用すると、ベクター中の非相同領域の存在によって相同組換えを介した遺伝子ターゲティングの効率が低下することが明らかになった。

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2025/06/18

B型肝炎ウイルス複製に機能するウイルス因子HBx複合体の構造機能解析

論文タイトル
Structural basis of the hepatitis B virus X protein in complex with DDB1
論文タイトル(訳)
B型肝炎ウイルス複製に機能するウイルス因子HBx複合体の構造機能解析
DOI
10.1073/pnas.2421325122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.24
著者名(敬称略)
田中 大貴 町田 晋一 他
所属
国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 ウイルス構造機能研究部
著者からのひと言
これまで、HBxはHBVの根治治療の標的として注目されていましたが、その難溶性の性質から、構造解析が進んでいませんでした。私たちは、HBV感染細胞にて、HBxがDDB1と複合体を形成して機能することをヒントに、大量かつ精製度の高い複合体の調製に成功し、構造解析および生化学的解析を進めることができました。HBxとDDB1との相互作用を阻害する薬剤の開発は、HBV増殖の中核を担うcccDNAを標的とした新規治療法戦略として期待され、本成果はB型慢性肝炎に対する新たな治療戦略の基盤となることが期待されます。

抄訳

B型肝炎ウイルス(HBV)の根治治療では、HBV完全閉環二本鎖DNA (cccDNA)の排除困難性が大きな課題となっている。cccDNAはウイルスRNA転写の鋳型として機能し、その転写活性制御が根治治療の鍵となる。特に、HBV Xタンパク質(HBx)は、宿主因子DDB1と複合体を形成し、cccDNAからの転写促進に機能する。本研究では、HBx-DDB1複合体を精製タンパク質複合体として調製し、クライオ電子顕微鏡により、その立体構造を解明した。さらに、高速原子間力顕微鏡により、構造決定が困難であったHBx領域の構造動態を明らかにした。また、生化学的解析により、宿主の転写制御因子群との相互作用を解析し、HBx-DDB1複合体によるcccDNA転写制御機構を示した。

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2025/06/17

血清レムナントコレステロール値と代謝機能障害関連脂肪性肝疾患の組織学的所見との関連

論文タイトル
Association Between Serum Remnant Cholesterol Level and Metabolic Dysfunction-associated Steatotic Liver Histology
論文タイトル(訳)
血清レムナントコレステロール値と代謝機能障害関連脂肪性肝疾患の組織学的所見との関連
DOI
10.1210/clinem/dgae597
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 110, Issue 6, June 2025, Pages e2064–e2070
著者名(敬称略)
三宅 映己 他
所属
愛媛大学大学院 医学系研究科医学専攻 消化器・内分泌・代謝内科学
著者からのひと言

抄訳

本研究では、肝生検により診断された222例の代謝機能障害関連脂肪性肝疾患患者を対象に、酵素法で測定した血清レムナントコレステロール(Rem-C)値と肝組織所見との関連を検討した。その結果、Rem-C値は肝脂肪蓄積、炎症、風船様変性など、NAFLD activity score(NAS)の構成要素と有意に関連し、特にNASが5以上の活動性の高い群で有意に高値を示した。性別別解析では、男性においてこの関連が明瞭であった。一方、Rem-C値と線維化ステージとの間には有意な関連は認められず、また計算式によって求めたRem-C値では、これらの組織所見との関連はみられなかった。以上より、計算値よりも実測されたRem-C値の方が代謝機能障害関連脂肪性肝疾患の病態をより的確に反映しており、特に男性では、血清Rem-C値の上昇が活動性の高い代謝機能障害関連脂肪性肝炎の存在を示唆する指標となる可能性があると考えられる。

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