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日本人論文紹介

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ユサコでは日本人の論文が掲載された海外学術雑誌に注目して、随時ご紹介しております。

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日本人論文紹介:一覧

2019/07/29

6日連続の朝食欠食が若年健常者のエネルギー代謝と血糖値の変動に及ぼす影響

論文タイトル
Effect of skipping breakfast for 6 days on energy metabolism and diurnal rhythm of blood glucose in young healthy Japanese males
論文タイトル(訳)
6日連続の朝食欠食が若年健常者のエネルギー代謝と血糖値の変動に及ぼす影響
DOI
10.1093/ajcn/nqy346
ジャーナル名
American Journal of Clinical Nutrition
巻号
The American Journal of Clinical Nutrition Vol.110 Issue.1
著者名(敬称略)
緒形 ひとみ 他
所属
広島大学 大学院総合科学研究科 行動科学講座

抄訳

大規模疫学調査等によって、朝食欠食は肥満や生活習慣病と関連していることが報告され、また一過性の食事介入実験でも平均血糖値に影響を及ぼすことが明らかとなっている。本研究では、健康な男性10名を対象に1日の摂取エネルギー量は等しい6日間の食事介入(1日3食摂取または1日2食(朝食欠食))実験を行い、朝食欠食が生体に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。食事介入期間中は持続血糖測定を行い、介入6日目にはエネルギー代謝を測定した。その結果、就寝前の血糖値は朝食欠食試行で有意に高値を示し、食事介入1日目のみ昼食後の血糖値が大きく上昇した。また、食事介入6日目は座位安静を保ってエネルギー代謝測定を行ったため、平均血糖値が高いという結果となった。24時間のエネルギー消費量や酸化基質に違いは認められなかった。安静と朝食欠食が血糖値の上昇をもたらすことが示され、血糖コントロールにおける身体活動と朝食摂取の必要性が示唆された。

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2019/07/22

臀筋跛行:体動時に必発する左臀部の限局性疼痛の原因は?

論文タイトル
Buttock claudication: what induces pain only in the left buttock on every movement?
論文タイトル(訳)
臀筋跛行:体動時に必発する左臀部の限局性疼痛の原因は?
DOI
10.1136/bcr-2019-231271
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 12 Issue 6
著者名(敬称略)
多胡 雅毅
所属
佐賀大学医学部附属病院総合診療部

抄訳

完全房室ブロック、永久ペースメーカー植え込み術後、閉塞性動脈硬化症、脳梗塞の既往がある89歳男性が、3日前から左臀部痛を自覚した。安静時には痛みは消失するが、起立や歩行動作などの体動時には必ず出現し、歩行困難となった。外傷や皮疹、臀部の圧痛や神経根症状はなかった。血液検査でDダイマーが1.24µg/mLと上昇しており、造影CTでは左上殿動脈に血栓閉塞を認め、上殿動脈閉塞による臀筋跛行と診断した。ペースメーカーの波形記録で発作性心房細動を認め、直接経口抗凝固薬を開始した。 臀筋跛行は内腸骨動脈、またはその分枝の虚血で生じる。確定診断は画像検査で行うが、体動時痛以外に症状がないため診断が難しい。内腸骨動脈領域の虚血による臀筋跛行の概念を知っておくことが、迅速で正確な診断につながる可能性がある。本症例のように体動時に必発し、安静時に改善する限局性の臀部痛を診た場合、臀筋跛行を想起する必要がある。

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2019/07/19

未破裂脳動脈瘤塞栓術後の長期成績とフォローアップ期間についての検討

論文タイトル
Long-Term Results and Follow-Up Examinations after Endovascular Embolization for Unruptured Cerebral Aneurysms
論文タイトル(訳)
未破裂脳動脈瘤塞栓術後の長期成績とフォローアップ期間についての検討
DOI
10.3174/ajnr.A6101
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 40, No. 7 (1191-1196)
著者名(敬称略)
村上知義 中村 元 他
所属
大阪大学医学部 脳神経外科

抄訳

【目的】脳動脈瘤に対するコイル塞栓術後の至適フォローアップ期間は明確ではない。今回我々は未破裂脳動脈瘤コイル塞栓術後の長期成績を調査し、再開通および再治療までの期間を検証した。
【方法】2006年4月から2011年3月に脳動脈瘤塞栓術を施行した148個の未破裂動脈瘤のうち、5年以上の経過観察が可能であった116個を対象とした。当院ではTOF-MRAを用いて塞栓術後の画像フォローを行っており、術翌日、3-6か月後、1年後、以後1年1回施行されている。
【結果】平均観察期間は7年で、術後2年以内に再開通した動脈瘤は19個(16.3%)あり、うち8個(6.8%)に対して再治療が行われた。術後2年以内に再開通しなかった瘤は、全例その後のフォロー期間中に再開通することはなかった。また、瘤の最大径が大きいものほど再開通率が高いことが明らかになった(P=0.019)。
【結論】未破裂脳動脈瘤の塞栓術後2年以内に再開通を認めなかった場合、術後7年間は再開通を認めなかった。本結果は、動脈瘤塞栓術後フォローアップ画像検査の頻度および期間を考慮するにあたり、参考となるかもしれない。

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2019/07/11

チオレドキシン様タンパク質2/2-シスペルオキシレドキシンのレドックスカスケードは葉緑体グルコース6リン酸脱水素酵素を酸化して活性化する

論文タイトル
Thioredoxin-like2/2-Cys peroxiredoxin redox cascade acts as oxidative activator of glucose-6-phosphate dehydrogenase in chloroplasts
論文タイトル(訳)
チオレドキシン様タンパク質2/2-シスペルオキシレドキシンのレドックスカスケードは葉緑体グルコース6リン酸脱水素酵素を酸化して活性化する
DOI
10.1042/BCJ20190242
ジャーナル名
Biochemical Journal
巻号
Vol. 476 No. 12 (1781-1790)
著者名(敬称略)
吉田 啓亮, 久堀 徹 他
所属
東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所

抄訳

レドックス制御は、タンパク質分子を酸化または還元することによってその活性を調節する分子機構である。植物葉緑体では、この制御系が光環境の変化に呼応してダイナミックに働き、光合成をはじめとするさまざまな葉緑体機能のオン・オフを行っている。我々は、2018年にレドックス制御の最大の謎であった光合成系タンパク質を夜に酸化して不活性化する分子装置(チオレドキシン様蛋白質2/2-シスペルオキシレドキシン(TrxL2/2CP)経路)を同定した。本研究では、このTrxL2/2CP経路の重要性に関する理解をさらに深めるために、この経路によって制御される標的タンパク質を探索した。グルコース6リン酸脱水素酵素(G6PDH)は、夜間のエネルギー供給に重要な酸化的ペントースリン酸経路の最初の反応を触媒する酵素である。生化学的な解析により、G6PDHはTrxL2/2CP経路に依存して酸化され、この酸化に伴って酵素活性が上昇することが明らかになった。この結果は、TrxL2/2CP経路が光合成機能の抑制と酸化的ペントースリン酸経路の促進というふたつの役割を果たすことによって、葉緑体代謝モードを昼型から夜型に切り替えていることを示している。

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2019/07/11

シアノバクテリアF1-ATPaseのγサブユニットの持つβ-ヘアピン構造には酵素活性の制御機能がある

論文タイトル
The β-hairpin region of the cyanobacterial F1-ATPase γ-subunit plays a regulatory role in the enzyme activity
論文タイトル(訳)
シアノバクテリアF1-ATPaseのγサブユニットの持つβ-ヘアピン構造には酵素活性の制御機能がある
DOI
10.1042/BCJ20190242
ジャーナル名
Biochemical Journal
巻号
Vol. 476 No. 12 (1771-1780)
著者名(敬称略)
秋山 健太郎, 久堀 徹 他
所属
東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所

抄訳

葉緑体とシアノバクテリアのATP合成酵素(FoF1)は,光合成電子伝達系と協働して働き,生命のエネルギー源であるATPを合成している.興味深いことに,光合成生物由来のFoF1のγサブユニットには,ミトコンドリアやバクテリアの酵素には見られない35-40アミノ酸で構成される特有の挿入配列がある.最近の構造解析により,この挿入配列が柔軟なβ-ヘアピン構造をとり,複合体分子内では酵素活性に影響する場所に位置していることが明らかになった.そこで,本研究ではこのβ-ヘアピン構造の可動性に注目してその周辺にCys残基を導入し,それによって形成されるジスルフィド結合を用いてβ-ヘアピン構造の動きを固定できる変異体を作製した.そして,ATP加水分解活性と活性制御がどのように変化するかを調べた.その結果,β-ヘアピン構造の下部を固定すると,ATP加水活性とADP阻害のpH依存性が著しく低下した.また,β-ヘアピン構造の上部はεサブユニットの結合によって構造が変化し,ε阻害を促進することが分かった.これらの結果は,光合成生物だけが持っている挿入配列がATP加水分解を制御し,生体内ATP濃度の維持管理に必要不可欠であることを示唆している.

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2019/07/04

マウスES細胞視床下部分化誘導系後期に残存するRax陽性細胞はTanycytesと類似する

論文タイトル
Tanycyte-Like Cells Derived From Mouse Embryonic Stem Culture Show Hypothalamic Neural Stem/Progenitor Cell Functions
論文タイトル(訳)
マウスES細胞視床下部分化誘導系後期に残存するRax陽性細胞はTanycytesと類似する
DOI
10.1210/en.2019-00105
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Vol.160 No.7 (1701–1718)
著者名(敬称略)
加納 麻弓子, 須賀 英隆 他
所属
名古屋大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科学

抄訳

Tanycytesは成体視床下部における神経幹/前駆細胞と考えられている。胎児発生初期に視床下部前駆細胞に広範に認められる転写因子Raxが、それ以後もTanycytesには発現し続けることが特徴である。本研究ではこのRax発現に着目することで、マウスES細胞からのTanycytes様細胞を見出すことに成功した。マウスES細胞視床下部分化誘導系後期におけるRax陽性細胞をsortingし、その性質を評価した。SortしたRax陽性細胞は、Sox2、Vimentin、Nestinなどの神経幹/前駆細胞マーカーを発現し、さらに成熟したTanycytesに特徴的なDio2やGpr50の発現を認めた。Rax陽性細胞はFGF2依存性に自己増殖を行い、継代可能なNeurosphereを形成すること、さらに視床下部ニューロンやグリアなど三系統の神経系細胞への分化能を有することから、視床下部神経幹/前駆細胞としての性質を持つことが示唆された。

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2019/06/24

日本人高齢者における乳製品摂取と機能障害のリスクについて:久山町研究

論文タイトル
Dairy consumption and risk of functional disability in an elderly Japanese population: the Hisayama Study
論文タイトル(訳)
日本人高齢者における乳製品摂取と機能障害のリスクについて:久山町研究
DOI
10.1093/ajcn/nqz040
ジャーナル名
American Journal of Clinical Nutrition
巻号
American Journal of Clinical Nutrition Vol.109 No.6 (1664–1671)
著者名(敬称略)
吉田 大悟 他
所属
九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野

抄訳

【目的】地域高齢者における乳製品摂取が将来の生活機能およびADL障害の発生に及ぼす影響を検討した。
【方法】生活機能とADLが自立した地域高齢者859人を7年間追跡した。生活機能は老研式活動能力指標、ADLはBarthel Indexで評価し、それぞれ1項目以上できない場合を障害ありとした。乳製品摂取量は、半定量式食物摂取頻度調査票を用いて算出し、残差法でエネルギー調整後4分位に分けて検討した。ポアソン回帰モデルを用いて相対危険を算出した。
【結果】生活機能障害の発生リスクは、乳製品摂取量の増加に伴い有意に低下した(傾向性P値=0.001)。乳製品摂取量の第1分位に対する第4分位の生活機能障害発生の相対危険(多変量調整後)は、0.74(95%信頼区間0.61-0.90)と有意に低かった。さらに乳製品摂取はADL障害の発生リスクとも有意な負の関連を認めた(傾向性P値=0.04)。一方で、これらの負の関連はたんぱく質摂取量をモデルに入れて調整すると減弱した。
【結論】地域高齢者において、乳製品の高摂取はおそらくたんぱく質摂取の増加を介して、将来の生活機能障害やADL障害の発生リスクの低下と関連する事が示唆された。

 

 

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2019/05/31

脳血管構造に応じた脳動脈瘤破裂率の違いは、脳動脈瘤の血行力学的環境の相違に依存している

論文タイトル
Differences in Cerebral Aneurysm Rupture Rate According to Arterial Anatomies Depend on the Hemodynamic Environment
論文タイトル(訳)
脳血管構造に応じた脳動脈瘤破裂率の違いは、脳動脈瘤の血行力学的環境の相違に依存している
DOI
10.3174/ajnr.A6030
ジャーナル名
American Journal of Neuroradiology American Society of Neuroradiology
巻号
American Journal of Neuroradiology Vol. 40, No. 5 (834-839)
著者名(敬称略)
福田 俊一 他
所属
国立病院機構 京都医療センター 脳神経外科

抄訳

目的:脳動脈瘤はその大きさと発生部位に応じて破裂率が有意に異なるが、そのメカニズムは不明である。そこで、計算流体力学 (CFD) 解析を用いてこれらの脳血管構造関連破裂リスクが脳動脈瘤の血行力学的環境に依存しているかどうかを検討した。
方法:国立病院機構共同臨床研究CFD ABO Studyの461登録症例から84例(Acom瘤42例 MCA瘤42例)の3DCTAと頚動脈エコー結果を用いて拍動流によるCFD解析を行い、血行力学指標と既知の破裂予測因子(年齢 性別 高血圧 喫煙歴 部位 大きさ)との関連を多変量解析で検討した。
結果:瘤の大きさは、壁ずり応力の大きさや時間的な乱れを表す指標と有意な相関を認めた。部位の違いでは、ずり応力の大きさと有意な相関を認め、乱れの指標に関しては多方向性の乱れの指標NtransWSSのみと有意な相関を認めた。他の既知の破裂リスクでは有意な相関は見られなかった。すべての指標の中でNtransWSSが部位と大きさ双方に対し最も高いオッズ比を示した。新たに提案した血管構造指標AAIは、ずり応力の大きさ・乱れに対し強い相関を示した。
結論:脳動脈瘤の大きさや部位による破裂率の違いは、瘤の血行力学的環境の相違を反映している可能性が示唆された。部位と大きさでは破裂の血行力学的要因が異なっていると考えられる。

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2019/05/27

Sex-lethalによる精子二型の形成

論文タイトル
Dimorphic sperm formation by Sex-lethal
論文タイトル(訳)
Sex-lethalによる精子二型の形成
DOI
10.1073/pnas.1820101116
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS May 21, 2019 116 (21) 10412-10417
著者名(敬称略)
酒井 弘貴 新美 輝幸 他
所属
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 基礎生物学研究所 進化発生研究部門

抄訳

性メカニズムは多様性に富み、昆虫では性決定の最上流遺伝子は近縁種であっても異なることが知られている。このことから、ある種では性決定最上流遺伝子として働く遺伝子が、他の種では全く異なる機能を持つ可能性が考えられる。本研究では、ショウジョウバエの性決定最上流遺伝子であるSex-lethalSxl)遺伝子に着目した。鱗翅目昆虫(ガとチョウの仲間)のモデル生物であるカイコにおけるSxl遺伝子の機能を類推するため、Sxl遺伝子の発現パターンを調べたところ、精巣で高発現していることが判明した。カイコの精巣では受精する精子である有核精子と、自身は受精しないが有核精子の受精に必要な無核精子の二種類の精子が形成される。ゲノム編集技術を用いて作出したSxl変異体の解析により、Sxl遺伝子は正常な無核精子の形成に必須であること、及び無核精子は雌の交尾嚢から受精嚢への有核精子の移動に必須であることが明らかとなった。

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2019/05/23

脳アミロイド血管症におけるタキシフォリンの多面的神経保護作用

論文タイトル
Pleiotropic neuroprotective effects of taxifolin in cerebral amyloid angiopathy
論文タイトル(訳)
脳アミロイド血管症におけるタキシフォリンの多面的神経保護作用
DOI
10.1073/pnas.1901659116
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS May 14, 2019 116 (20) 10031-10038
著者名(敬称略)
井上 隆之 田中 将志 他
所属
健康科学大学健康科学部理学療法学科

抄訳

脳アミロイド血管症(CAA)は、アミロイドβ(Aβ)が脳血管に集積し、脳血管の機能障害や脳出血をもたらすことで、認知症発症・進展と密接に関わる疾患である。アルツハイマー病(AD)においても高頻度で認められ、CAAとADは相互に深く関連すると考えられる。よって、CAAの効果的予防法・治療戦略の開発は喫緊の課題である。
我々はこれまで、認知症発症・進展と関連するCAAのモデルマウスにて、シベリアカラマツ等の植物に含まれるフラボノイド・タキシフォリンの経口投与により、脳内血流量の改善、脳内Aβ量の減少(脳からの排出促進)とともに、認知機能低下が抑制されることを認めてきた(Acta Neuropathol Commun 2017)。そこで本研究では、タキシフォリンが有する作用のさらなる解明のため、タキシフォリンの経口投与は脳内の神経傷害因子に対しどのような作用を発揮するかについて詳細な検討を行った。その結果、血液脳関門のタキシフォリンに対する透過性は微量であるにもかかわらず、タキシフォリンを経口投与したマウスでは、海馬及び大脳皮質のいずれにおいても、脳内のAβ産生・分泌系に関わるApoE–ERK1/2–APP系が抑制されて、脳内Aβ産生自体が減少することを見出した。また、これまでゲノムワイド関連解析から認知症との関連が示唆され、脳ではミクログリア特異的に発現する細胞表面分子・TREM2について、TREM2発現亢進は脳内炎症増悪と関連すること、さらにタキシフォリン投与によりTREM2陽性細胞の脳内集積が抑制され、脳内炎症が抑制されることを認めた。また、タキシフォリンは、他の神経傷害因子であるグルタミン酸や活性酸素のレベルに対しても抑制効果を発揮した。これらの神経保護効果と一致して、脳内のアポトーシス指標はタキシフォリン経口投与マウスにて低値であった。
以上より、CAAモデルマウスに経口投与したタキシフォリンは、脳内にてAβ産生抑制を始めとする多面的な神経保護作用を発揮することで、認知機能低下の抑制に寄与すると考えられた。これらの知見は、CAAに対する新規予防・治療戦略の開発に貢献することが期待される。

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