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2024/07/01

単純ヘルペスウイルス1型の孤児遺伝子UL31.6にコードされる新規神経病原性因子の同定

論文タイトル
Identification of a novel neurovirulence factor encoded by the cryptic orphan gene UL31.6 of herpes simplex virus 1
論文タイトル(訳)
単純ヘルペスウイルス1型の孤児遺伝子UL31.6にコードされる新規神経病原性因子の同定
DOI
10.1128/jvi.00747-24
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Ahead of Print
著者名(敬称略)
加藤 哲久, 川口 寧 他
所属
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門
著者からのひと言
 本研究は、DNAウイルス研究のプロトタイプであるHSV-1でさえ、病態発現を司るHSV-1遺伝子の全容は未解明であることを示しています。HSV-1病態発現機構を包括的に理解するためには、最先端オミックス解析による新規HSV-1遺伝子の包括的な解読だけでなく、今後も個々の新規HSV-1遺伝子に対して、労力を要する伝統的な性状解析を、着実に継続していく必要があると我々は信じ、研究を継続しております。

抄訳

 近年、最先端オミックス解析により、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)がコードする新規遺伝子が多数報告されている。しかしながら、一連の新規遺伝子の生物学的意義は、ほぼ不明であり、孤児遺伝子として放置されていた。本研究では、新規遺伝子UL31.6に着目し、UL31.6欠損は、(i) 3種類の神経系細胞におけるHSV-1プラーク形成能を有意に減少させたが、4種類の非神経細胞では影響しないこと、(ii) 頭蓋内感染マウスの死亡率および脳内における子孫ウイルス量を有意に減少させたが、眼球およびその周辺の病態発現や涙液に検出される子孫ウイルス量にはほぼ影響しないこと、を明らかとした。一連の結果より、UL31.6は、おそらく中枢神経系組織において神経細胞間のHSV-1感染を促進することで、特異的に神経病原性因子として機能することが示唆された。孤児遺伝子UL31.6がHSV-1の病態発現を司るという本知見を鑑みると、従来ジャンクとして放置されてきた孤児遺伝子も、様々な生物学的意義を有している可能性が考えられる。

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