抄訳
背景と目的
欧米と比較し頻度の高い頭蓋内動脈硬化性脳主幹動脈閉塞症(ICAD-LVO)に対する血管内治療 (EVT)は、機械的血栓回収術 (MT)無効例が多く、開通しても早期再閉塞率が高いため、最適な治療手技は確立していない。本研究では、日本国内において、頭蓋内動脈硬化性脳主幹動脈閉塞症(ICAD-LVO)に対する最適な血管内治療 (EVT)検討した。
方法と対象
2017年1月から2019年12月の間、国内51施設で行われた多施設共同観察研究で、Tandem Groupを除く509例を対象とした。EVT治療手技を、MT単独 (MT-only)、経皮的血管形成術 (PTA)、ステント留置術 (Stent)の3群に分類した。EVT中に一度でもPTAを施行した群はPTA群、手技中にStentを留置した群はStent群に分類した。主要評価項目は、EVT後90日以内の治療血管の再閉塞、副次評価項目は治療直後の再開通率、90日後の転帰、90日以内の頭蓋内出血とした。
結果
MT-only群(207例)、PTA群(226例)、Stent群(76例)に分類し比較検討した。患者背景は心不全の既往や、M2閉塞はMT-only群で多く、VA閉塞は、Stent群で多かった 。抗血小板薬は、発症後、特に治療中に抗血小板薬を追加した症例がPTA群、Stent群で多かった。70%以上の残存狭窄は、MT-only群で多く、術中合併症は、PTA群、Stent群で多かった。主要評価項目である再閉塞は、MT-only群で多く、MT-only群に対するPTA群の調整ハザード比は0.48(95%信頼区間0.29–0.80)であった。また再閉塞患者の83.5%は、治療10日以内に再閉塞し、特に62%の患者は治療2日以内に再閉塞を認めた。副次評価項目である治療直後のTICI 2b以上の有効再開通率は、PTA群、Stent群で高く、90日後の転帰や頭蓋内出血は、3群間で有意差がなかった。
結語
ICAD-LVOに対するEVTにおいて、PTA群は有意に再閉塞率が低かった。GP IIb/IIIa阻害薬が未承認である我が国において、ICAD-LVOと診断した場合は、PTAが第一選択肢になり得る。また、再閉塞患者の62%は、2日以内に再閉塞するため、ICAD-LVOを疑えば、できるだけ早期に抗血小板薬を開始することが望まれる。