抄訳
急性肝不全(ALF)は、急性肝障害(ALI)から進行する重篤な疾患であり、多くは多臓器不全から最終的には死に至る。現在、ALFの予後を改善できる治療は肝移植しかないが、ALIは非常に不均一な疾患であるため、どのALI患者がALFに進行し、肝移植を要するかを予測する定量的な指標が存在しなかった。本研究では、ALI 319例のデータを機械学習的アプローチにより後方視的に解析し、ALIの状態を反映するバイオマーカーとしてプロトロンビン時間活性率(PT%)を同定した。ALF患者における肝移植の必要性を予測する先行研究とは異なり、本研究ではPT%の動態に注目することにより、非常に不均一なALI患者を、臨床経過と予後が異なる6つのグループ、すなわち、自己終息群、内科集中治療反応群、内科集中治療不応群に層別化することができた。驚くべきことに、これらのグループは入院時に得られる臨床データによって高精度に予測可能であった。さらに、数理モデリングと機械学習により、個々のPT%動態が予測できる可能性が示された。この知見により、医療資源配分の最適化、個別化治療の早期導入が可能となり、ALF予後の改善が期待できる。