抄訳
ダウン症候群は、21番染色体の3番目のコピーが存在することによって引き起こされ、700出生に1人の割合で発症する。過剰染色体そのものを消去する治療法は現在ない。本研究では、CRISPR-Cas9システムを使用して、トリソミーのiPS細胞と皮膚線維芽細胞の両方において、過剰染色体を切断することにより標的染色体を細胞から消去できることを示した。染色体のDNA修復能力を抑制すると、標的染色体の除去率が上昇した。また、染色体の消去により遺伝子発現と細胞の表現型が可逆的に回復した。しかし、この技術では、標的染色体が消去されなかった場合、当該染色体に変異が導入される可能性がある。したがって、このアプローチをそのまま臨床応用することはできない。本研究は、あくまでも体外の細胞レベルでの概念実証研究である。一方で、過剰染色体を取り除くという発想と、その原理を提案できた意義があると思われる。