抄訳
アルドステロン産生腺腫(APA)は、副腎の良性腫瘍であり、アルドステロンの過剰産生による二次性高血圧を引き起こします。APAの多くはKCNJ5遺伝子に変異を持ち、通常の高血圧と比べて様々な臓器の合併症が起こりやすい特徴がありますが、詳しい分子メカニズムは不明でした。本研究では、最新のマルチオミクス解析技術を用い、APAには4つの異なる腫瘍細胞集団(①ストレス応答性細胞、②アルドステロン産生細胞、③コルチゾール産生細胞、④間質様細胞)が存在することを発見しました。腫瘍細胞はストレス応答性細胞から、アルドステロン産生細胞あるいはコルチゾール産生細胞へと分化し、後者は増殖能力の高い間質様細胞に進展することを明らかにしました。腫瘍内には脂質関連マクロファージが多く存在し、コルチゾール産生細胞や間質様細胞との相互作用により、腫瘍のコルチゾール産生の増加や腫瘍増大に関連することが示唆されました。さらに、腫瘍内のコルチゾール産生が、血中コルチゾール濃度を上昇させ、それが椎体骨折の発症に関連することが明らかになりました。本研究により、複雑な細胞間相互作用を特徴とするAPAの多様な細胞生態系の分子メカニズムと臨床的意義が明らかになりました。