抄訳
KARRIKIN INSENSITIVE 2(KAI2)は山火事などで植物が燃焼した際の煙に含まれる発芽誘導物質カリキンと結合するタンパク質として同定されたが,未だ植物内生リガンド(KAI2 ligand; KL)は発見されていない。最近,KAI2のシグナル伝達機構に関してはその概要が明らかになってきたが,リガンド認識機構については未解明な点が残されている。本研究では,KAI2リガンドの構造要求性およびKAI2活性化機構の解明を目的として,KAI2アゴニスト(dMGer)を構造改変することで,KAI2によって加水分解されない分子構造としたdMGerアナログ(1'-carba-dMGerと6'-carba-dMGer)を設計した。合成したdMGerアナログのKAI2結合活性および植物に対する生理活性を詳細に解析した結果,KAI2のシグナル伝達には,リガンドがKAI2と結合するだけでは不十分であり,リガンドのブテノライド環が加水分解され,その後KAI2の触媒残基と共有結合を形成することが重要であると明らかにした。本知見は,KLもKAI2によって加水分解・切断されるブテノライド環を有していることを示唆している。