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2025/03/12

日本発の甲状腺クリーゼガイドラインは有用である:前向き多施設レジストリ研究より

論文タイトル
Prospective Multicenter Registry–Based Study on Thyroid Storm: The Guidelines for Management From Japan Are Useful
論文タイトル(訳)
日本発の甲状腺クリーゼガイドラインは有用である:前向き多施設レジストリ研究より
DOI
10.1210/clinem/dgae124
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 110, Issue 1, January 2025
著者名(敬称略)
古川 安志 赤水 尚史 他
所属
隈病院/和歌山県立医科大学 内科学第一講座 
著者からのひと言
甲状腺クリーゼの致死率は10%を超えると報告されてきた。その予後を改善すべく、著者らはこれまでに診断基準の確立、全国疫学調査による実態調査を行い、さらに世界初の診療ガイドラインを作成してきた。今回、同ガイドラインの妥当性を検証するために、全国多施設前向きレジストリ調査を行った。その結果、登録された患者が前回の調査に比してより重症であるにも関わらず、致死率が5.5%と半減していることが判明し、同ガイドラインの有用性が示された。

抄訳

背景:甲状腺機能亢進症(TS)の死亡率は10%以上と報告されている。
目的:日本甲状腺学会と日本内分泌学会が提唱した2016年のTS診療ガイドラインの有効性を評価した。
方法:WEBプラットフォーム(REDCap)を用いて、前向きに全国の多施設から患者登録を行ってもらうレジストリ研究を実施した。即ち、新規発症時にTS患者が登録され、その後入院後30日目と180日目に各患者の臨床情報と予後が報告された。
結果:4年間で 110例のTS患者が登録された。APACHE IIスコアの中央値は13点であり、以前の全国疫学調査のスコアである10点よりも高くより重症であった(p=0.001)。それにもかかわらず、30日目の死亡率は5.5%と、前回の全国調査の10.7%に比較して約半減していた。左室駆出率低下、低BMI、ショック、38℃以上の発熱がないことが予後不良因子であった。当診療ガイドラインに従わなかった場合、ガイドラインに従った場合の死亡率より有意に高かった(50% vs 4.7%, p=0.01)。
結論:予後は前回の全国調査よりも良好であり、半減していた。診療ガイドラインに従った場合、死亡率は有意に低値であった。以上より、本ガイドラインはTS診療に有用であることが示された。

 

 

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