抄訳
産業技術総合研究所の黒田恭平、中島芽梨、成廣隆らと、海洋研究開発機構のMasaru K. Nobu(延優)は、北海道大学、東北大学と共同で、メタン生成アーキアに寄生する超微小バクテリアの培養に成功し、新属新種として記載しました。共同研究グループは、廃水処理システムにおいて中心的な役割を担うメタン生成アーキアに寄生してその生理活性を低下させるバクテリアを、世界に先駆けて発見しており、今回その培養に成功しました。本研究は、約40億年前に進化的に分かれ、生物学的に大きく異なっているアーキアに寄生するバクテリアを培養した世界初の例です。「Minisyncoccus archaeiphilus」と命名したこのバクテリアは、寄生できる宿主の範囲が非常に狭く、宿主アーキアの特定部位にのみ感染することが観察されました。さらに、本培養株が属する未知バクテリア巨大系統群である「Candidate phyla radiation (CPR)」を新門「Minisyncoccota」と命名しました。本研究において系統学的に整理し、分離株を公的菌株保存機関へ寄託することにより、これまで謎に包まれていたCPRに属するバクテリアの生理や生態学的役割の理解が進むことが期待されます。