抄訳
う蝕病原細菌のStreptococcus mutansは全身疾患に関与することが知られている。本菌が産生するグルカン合成酵素や細胞壁の糖転移酵素(RgpI)はう蝕病原因子であることが報告されている。そこで、これらの酵素が全身疾患へ関与する可能性について検討した。RgpI遺伝子を欠損したS. mutans、グルカン合成能が低下した変異株、野生株にルシフェラーゼ遺伝子を組込んだ菌体を作成後、マウスへ経尾静脈接種し、各臓器への分布を調べた。その結果、脾臓と腎臓からルシフェラーゼによる強い発光シグナルが検出された。野生株を接種したマウスで最も強く、これに比較すると低グルカン合成変異株を接種したマウスでは弱い発光であった。これら2種類の菌体を接種したマウスでは血中から炎症性サイトカインが検出され、生存率が減少した。一方、RgpI欠損株を接種したマウスでは発光量、血中の炎症性サイトカイン量が最も低く生存率100%であった。したがって、RgpIは全身疾患における病原因子である可能性が示唆された。