抄訳
約半数のがん細胞で発現し、かつ化学療法剤の抗がん効果を高めるSLFN11遺伝子は、化学療法の効果予測バイオマーカーとして最近注目されているが、効果を高めるメカニズムについては不明な点が多かった。本論文では、化学療法剤であるトポイソメラーゼ1阻害剤投与下で、SLFN11がリボゾームの構成要素であるリボゾームRNAの合成を低下させることを発見した。リボゾームRNAの低下をトリガーに、リボゾームの機能が低下し、翻訳が著しく障害された。翻訳障害によって、半減期の短いタンパク質が優先的に減少したが、その中には抗アポトーシス作用を持つMCL1(半減期1時間)が含まれており、このMCL1の減少がSLFN11によって引き起こされるアポトーシスの原因の一つだった。本研究によって、化学療法剤の効果予測バイオマーカーとしてのSLFN11の機能が明らかとなった。