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2025/03/17

SLFN11はリボゾーム生合成障害を介してTP53非依存的なアポトーシスを起こす

論文タイトル
SLFN11-mediated ribosome biogenesis impairment induces TP53-independent apoptosis
論文タイトル(訳)
SLFN11はリボゾーム生合成障害を介してTP53非依存的なアポトーシスを起こす
DOI
10.1016/j.molcel.2025.01.008
ジャーナル名
Molecular Cell
巻号
Molecular Cell Volume 85, Issue 5
著者名(敬称略)
小川茜、泉川桂一、田手壮太、村井純子 他
所属
愛媛大学先端研究院プロテオサイエンスセンター
著者からのひと言
がん化学療法は、半世紀以上にわたり多くの患者に用いられていますが、実臨床において効果を予測できるバイオマーカーがありません。SLFN11は、がんの種類によりますが、約半分のがんで発現し、一般病院で広く行われている病理検査を利用することで検出が可能です。私は「化学療法にも精密医療を!」をスローガンに、SLFN11研究の基礎研究と臨床応用に向けて邁進しています。SLFN11にご興味がある臨床の先生がおられましたら、気軽にご連絡ください。

抄訳

約半数のがん細胞で発現し、かつ化学療法剤の抗がん効果を高めるSLFN11遺伝子は、化学療法の効果予測バイオマーカーとして最近注目されているが、効果を高めるメカニズムについては不明な点が多かった。本論文では、化学療法剤であるトポイソメラーゼ1阻害剤投与下で、SLFN11がリボゾームの構成要素であるリボゾームRNAの合成を低下させることを発見した。リボゾームRNAの低下をトリガーに、リボゾームの機能が低下し、翻訳が著しく障害された。翻訳障害によって、半減期の短いタンパク質が優先的に減少したが、その中には抗アポトーシス作用を持つMCL1(半減期1時間)が含まれており、このMCL1の減少がSLFN11によって引き起こされるアポトーシスの原因の一つだった。本研究によって、化学療法剤の効果予測バイオマーカーとしてのSLFN11の機能が明らかとなった。

 

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