抄訳
シチジン脱アミノ化酵素APOBEC3 (A3)は、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)などのレトロウイルスの複製を強力に阻害します。しかし、HIV-1 は感染細胞内にてウイルスがコードする Vif タンパク質により、細胞内の A3 をユビキチン化–プロテアソーム分解系を介して特異的に分解除去します。そのため、A3-Vif 結合を阻害することは新規抗 HIV-1 薬開発の魅力的な標的です。これまで、Vif分子上にあるA3結合面(インターフェイス)から遠く位置する Vif PPLP モチーフは A3 の分解に必要ですが、PPLP が A3 分解に関与するメカニズムは不明でした。本研究では、生化学的および構造生物学的な分析により、PPLPの役割を解明しました。PPLP モチーフは、短い下流フラグメント α6 とともに、安定した L 字型構造を形成し、A3 認識インターフェイスの裏打ちとして機能することがわかりました。重要なことに、PPLPは複数の A3 ファミリー酵素を認識する Vif の機能に必須でした。これらの発見により、Vifの弱点となる標的部位を明らかにし、A3 を細胞防御酵素として利用する新しい HIV-1 Vif阻害剤の開発が期待されます。