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2025/03/18

HIV-1 Vif 上のPPLP高度保存領域のユニークな構造はAPOBEC3認識領域の形成に不可欠である 

論文タイトル
The unique structure of the highly conserved PPLP region in HIV-1 Vif is critical for the formation of APOBEC3 recognition interfaces
論文タイトル(訳)
HIV-1 Vif 上のPPLP高度保存領域のユニークな構造はAPOBEC3認識領域の形成に不可欠である 
DOI
10.1128/mbio.03332-24
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio Vol. 16 No. 3
著者名(敬称略)
岩谷靖雅、松岡和弘 他
所属
(独)国立病院機構 名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫研究部
著者からのひと言
リンパ球などには強力な抗ウイルス作用をもつ複数種のAPOBEC3酵素が存在する。HIV-1はウイルスがコードするVifによりこれらの酵素を分解し、APOBEC3による抗ウイルス作用から逃れ増殖することができる。本研究では、Vifのアロステリックな機能領域の同定とその機序を明らかにした。Vifの機能を阻害するための標的領域となりうるため、今後、新しい作用機序をもつ抗HIV-1治療薬の開発につなげていきたい。 

抄訳

シチジン脱アミノ化酵素APOBEC3 (A3)は、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)などのレトロウイルスの複製を強力に阻害します。しかし、HIV-1 は感染細胞内にてウイルスがコードする Vif タンパク質により、細胞内の A3 をユビキチン化–プロテアソーム分解系を介して特異的に分解除去します。そのため、A3-Vif 結合を阻害することは新規抗 HIV-1 薬開発の魅力的な標的です。これまで、Vif分子上にあるA3結合面(インターフェイス)から遠く位置する Vif PPLP モチーフは A3 の分解に必要ですが、PPLP が A3 分解に関与するメカニズムは不明でした。本研究では、生化学的および構造生物学的な分析により、PPLPの役割を解明しました。PPLP モチーフは、短い下流フラグメント α6 とともに、安定した L 字型構造を形成し、A3 認識インターフェイスの裏打ちとして機能することがわかりました。重要なことに、PPLPは複数の A3 ファミリー酵素を認識する Vif の機能に必須でした。これらの発見により、Vifの弱点となる標的部位を明らかにし、A3 を細胞防御酵素として利用する新しい HIV-1 Vif阻害剤の開発が期待されます。 

 

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