抄訳
背景と目的: 脳内出血 (ICH) は抗凝固薬の最も重篤な副作用です。本研究はICHの血腫拡大を予測するBlack hole sign (BH)の頻度がワルファリン(Wf)とdirect oral anticoagulant (DOAC)の間で異なるという仮説を立て、検証しました。
方法: 本研究は抗凝固療法中に脳出血を発症した患者を対象としました。血腫体積はABC/2法で測定し、BHの有無は内服情報を知らない放射線科医が判定しました。本研究は血腫体積が 12.5 ml 以上増加した場合を「血腫拡大」と定義しました。
結果:多変量ロジスティック回帰分析の結果、脳室穿孔の有無 (p=0.02、オッズ比 (OR): 3.51、95% 信頼区間 (CI): 1.32 – 10.2) および BH (p<0.01、オッズ比: 4.86、95% CI: 1.73 – 14.3) が血腫拡大症例と非血腫拡大症例の間で有意差を認めました。BHの頻度はWf症例とDOAC症例間で有意差を認めました(p<0.01)。また、BHの有無はWf症例で血腫量の増加と関連していましたが(p=0.05)、DOAC症例では血腫量の増加と関連していませんでした(p=0.14)。
結語: BHはWf症例で頻繁に認めた。また、DOAC内服中のICH症例よりもWf内服中のICH症例の方が BHの信頼性が高いことを示した。