抄訳
神経障害性疼痛は主に末梢神経損傷により生じる慢性疼痛であり、その病態形成には末梢・中枢における体性感覚神経系の病変が深く関与するが、その創薬戦略は定まっていない。Transient receptor potential canonical 3 (TRPC3) はPLCと共役して細胞外からのCa2+流入を担う受容体活性化型チャネルである。中枢神経系や一次感覚神経、末梢免疫細胞等に広く発現することから、本研究では末梢神経損傷後の神経障害性疼痛に対するTRPC3の関与について検討した。その結果、pSNL処置による機械痛覚過敏の発症がTRPC3欠損により顕著に抑制されることが明らかとなった。さらに、脊髄後角神経細胞特異的にTRPC3をノックダウンするとpSNL処置後の機械痛覚過敏が抑制された。野生型マウスにTRPC3アゴニストGSK1702934Aを髄腔内投与すると急性の機械痛覚過敏が認められ、神経障害性疼痛の病態と関連する脊髄NK1RおよびPLC活性化により惹起される機械痛覚過敏はTRPC3欠損により抑制された。以上の結果より、末梢神経損傷後の神経障害性疼痛において、脊髄後角神経細胞TRPC3がGq-PLC経路を介して疼痛形成に重要な役割を果たすことが示された。