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2025/04/07

放線菌アクチノプラネス・ミズーリエンシスにおいて二成分制御系のオーファン応答制御因子が生理的に成熟した胞子嚢の形成に関与している

論文タイトル
Involvement of an orphan response regulator of the two-component regulatory system in the formation of physiologically mature sporangia in Actinoplanes missouriensis
論文タイトル(訳)
放線菌アクチノプラネス・ミズーリエンシスにおいて二成分制御系のオーファン応答制御因子が生理的に成熟した胞子嚢の形成に関与している
DOI
10.1128/spectrum.03272-24
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum Vol. 13, No. 4
著者名(敬称略)
安久都 卓哉 手塚 武揚 大西 康夫 他
所属
東京大学 大学院農学生命科学研究科 応用生命工学専攻 醗酵学研究室
著者からのひと言
胞子嚢はカビではよく知られていますが、バクテリアでは極めて珍しい存在です。我々が研究対象としている放線菌は、胞子嚢の中にべん毛を有する胞子を形成し、胞子嚢開裂によって放出された胞子は遊走子となって、水中を高速で運動します。進化の方向が単純から複雑だとすると、この放線菌はもっとも進化したバクテリアの1つだと言っても過言ではありません。我々はこの複雑な形態分化の分子機構に興味をもち、長年研究していますが、本論文は一連の研究の1つです。微生物細胞の不思議に迫ることを目指しています。

抄訳

放線菌アクチノプラネス・ミズーリエンシスは、休眠胞子が詰まった胞子嚢を形成します。胞子嚢は水がかかると胞子嚢膜が破れ、胞子が放出されます(胞子嚢開裂)。以前の解析では、胞子嚢形成時に転写が増大する136の遺伝子を同定していましたが、今回、そのうちの1つであるasfRの機能解析を行いました。asfRは、バクテリアの環境応答のためによく用いられる二成分制御系の応答制御因子の制御ドメインをコードしていますが、通常と違って、その周辺には、センサーヒスチジンキナーゼはコードされていませんでした。asfR遺伝子の破壊株では、形態的には正常な胞子嚢が形成されましたが、この胞子嚢は開裂条件でも胞子を放出しませんでした。また、AsfRの機能には、リン酸化を受けるアスパラギン酸残基が必要であることがわかりました。これまで、胞子嚢開裂の初期段階に関わるタンパク質は全くわかっていなかったため、開裂の準備ができた(=生理的に成熟した)胞子嚢の形成に必須な制御因子としてAsfRを同定できたことの意義は大きいと考えています。

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