抄訳
放線菌アクチノプラネス・ミズーリエンシスは、休眠胞子が詰まった胞子嚢を形成します。胞子嚢は水がかかると胞子嚢膜が破れ、胞子が放出されます(胞子嚢開裂)。以前の解析では、胞子嚢形成時に転写が増大する136の遺伝子を同定していましたが、今回、そのうちの1つであるasfRの機能解析を行いました。asfRは、バクテリアの環境応答のためによく用いられる二成分制御系の応答制御因子の制御ドメインをコードしていますが、通常と違って、その周辺には、センサーヒスチジンキナーゼはコードされていませんでした。asfR遺伝子の破壊株では、形態的には正常な胞子嚢が形成されましたが、この胞子嚢は開裂条件でも胞子を放出しませんでした。また、AsfRの機能には、リン酸化を受けるアスパラギン酸残基が必要であることがわかりました。これまで、胞子嚢開裂の初期段階に関わるタンパク質は全くわかっていなかったため、開裂の準備ができた(=生理的に成熟した)胞子嚢の形成に必須な制御因子としてAsfRを同定できたことの意義は大きいと考えています。