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2025/04/08

SARS-CoV-2感染が遷延しレムデシビル耐性を示した免疫不全患者の臨床的・分子生物学的背景

論文タイトル
Clinical and molecular landscape of prolonged SARS-CoV-2 infection with resistance to remdesivir in immunocompromised patients
論文タイトル(訳)
SARS-CoV-2感染が遷延しレムデシビル耐性を示した免疫不全患者の臨床的・分子生物学的背景
DOI
10.1093/pnasnexus/pgaf085
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
PNAS Nexus Volume 4, Issue 4
著者名(敬称略)
入山 智沙子 市川 貴也(執筆者) 他
所属
藤田医科大学医学部 血液内科学
北海道大学医学研究院 病原微生物学教室
著者からのひと言
免疫不全者にとっては、COVID-19は未だ脅威な感染症です。本症例のような持続感染は、血液内科医であれば一度は経験するであろう決して珍しくない事象ですが、その体内で何が起こっているのか未だ不明な点が多いです。本研究は、3例の持続感染者において、ウイルス遺伝子の時間的多様性を明らかにするともに、薬剤耐性ウイルスの性状を実験室内で解析した点でユニークであると言えます。「ベッドサイド(臨床)からベンチ(基礎)まで」を体現した研究であり、今後のCOVID-19診療の一助となることに期待します。

抄訳

血液悪性疾患などの免疫不全患者では、SARS-CoV-2感染が遷延(持続感染)し、難治性となる場合がある。我々は、持続感染を起こした悪性リンパ腫患者3例について、病理学的およびウイルス学的に詳細に解析した。全症例において抗ウイルス薬治療が奏功せず、ウイルスRNA量が1ヶ月以上高いレベルで維持された。2例が死亡し、病理解剖ではサイトメガロウイルスの再活性化や細菌/真菌の重複感染を認めた。ウイルス遺伝子を次世代シーケンサーにて解析したところ、様々な変異が蓄積し、それらの変異頻度が経時的に変化していることが明らかとなった。また、レムデシビルの標的分子であるNSP12にV792I・M794Iの変異が検出された。これらの変異を持つウイルスに対して薬剤感受性試験および病原性試験を行なった結果、V792I・M794I変異はともにレムデシビルに対して耐性化を示し、病原性は減弱していることが判明した。
【結語】薬剤耐性ウイルスの出現抑制を目的とした抗ウイルス薬の早期投与や併用療法など、生命予後の改善を目指した新たな治療戦略の考案が重要である。

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