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2025/04/09

原発性アルドステロン症に対する手術適応評価における副腎静脈サンプリングの最適なLateralization Indexの検討

論文タイトル
Assessing Lateralization Index of Adrenal Venous Sampling for Surgical Indication in Primary Aldosteronism
論文タイトル(訳)
原発性アルドステロン症に対する手術適応評価における副腎静脈サンプリングの最適なLateralization Indexの検討
DOI
10.1210/clinem/dgae336
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻号
Volume 110, Issue 4, April 2025, Pages e1084–e1093
著者名(敬称略)
小林 洋輝 他
所属
日本大学医学部 内科学系 腎臓高血圧内分泌内科学分野
著者からのひと言
本研究は、原発性アルドステロン症に対する外科的治療の適応判断に用いられる副腎静脈サンプリングのLateralization Index(LI)について、国際的な大規模コホートと患者意識調査を基に最適カットオフ値を提示した初の研究である。本研究結果により、手術の必要性を判断するための国際的に標準的な判定方法を確立したことでグローバルな視点からこの病気の診断、治療の標準化に貢献できる。

抄訳

原発性アルドステロン症(primary aldosteronism; PA)の外科的治療適応を判断する際には、副腎静脈サンプリング(adrenal venous sampling; AVS)によるアルドステロンの左右比(lateralization index; LI)が指標として推奨されている。しかし、どの程度のLIで手術による治癒が期待できるか、明確なカットオフ値はこれまで確立されていなかった。本国際多施設共同研究では、PA患者1,550例(11カ国・16施設)の後ろ向きコホートを対象に、AVS所見から手術で治癒しうるPA(片側性PA)を識別するための最適LIカットオフ値を検討した。 まず、外科手術に対する治癒期待に関する患者側の意向も考慮したカットオフ設定を行うため、日本人PA患者82名に対してアンケート調査を実施し、手術を決断するために必要と考える治癒率の中央値が80%であることを確認した。これを踏まえ、LIのカットオフ値は「治癒率80%の陽性的中率」を達成する水準として設定された。その結果、最適LIカットオフ値はACTH非刺激時で3.8、ACTH刺激時で3.4と算出された。さらに、CTでの副腎結節の存在、ならびに対側抑制(contralateral suppression: CR<0.4)が、外科的治療により治癒し得るPAの独立した予測因子であることが示され、これらの指標をLIと組み合わせることで予測精度は大幅に向上した。本研究により、AVSにおけるLIの最適カットオフ値が初めて明確化された。加えて、CT所見や対側抑制を併用することで、PAに対する外科的治療の適応をより精密に判断できる可能性が示唆された。

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