抄訳
担子菌のトリコスポロン目には,酵母型と菌糸型を持つ二形性の酵母が多く分類されます.菌糸型は真菌症の原因となるため,二形性の機序や種の簡便な同定法は重要な課題になります。私達は今までに,重症化すると死ぬこともある深在性トリコスポロン症の原因菌の菌糸がマグネシウムを添加することにより過度に伸長することを見つけていました.本論文では,この効果がトリコスポロン目の二形性酵母の間で共通かどうかを調べると共に,酵母の分類指標の一つになるかどうかを検討しました.その結果,マグネシウムの菌糸伸長効果はトリコスポロン目の二形性酵母で共通なことがわかりました.一方,菌糸の伸長と共に現れる隔壁の多重化や液胞の増大といった特徴はトリコスポロン目の中でもトリコスポロン属に偏って現れることがわかりました.よって,本研究の成果は,菌糸の形成メカニズムや分類研究に役立つと期待されます.