抄訳
アカパンカビをモデルに、糸状菌の抗ウイルス応答におけるRNA編集の役割を調査した。その結果、ゲノム上で隣接するA-to-I RNA編集酵素「old」とジンクフィンガー転写因子「zao」が、ウイルス感染応答を制御することを発見した。特にOLD酵素は、zao mRNA上の未成熟終止コドン(PSC)を標的に、タンパク質合成を中断するはずのシグナルをトリプトファンをコードするよう編集する。このPSC編集によって機能的な全長型ZAOタンパク質が合成され、その量が抗ウイルス応答の強弱を切り替える「分子スイッチ」として機能する。通常、このスイッチは適切に制御されて無症状感染を維持するが、主要な抗ウイルス防御機構であるRNAi(RNA干渉)経路が欠損すると、このシステムが過剰に活性化し、植物の過敏感反応にも似た重篤な症状(免疫暴走)を引き起こす。この「old-zao」遺伝子モジュールは、他の主要な糸状菌でも進化的に保存されていることが示唆された。