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2025/05/09

アフリカツメガエルを用いたヒト病原性細菌感染モデルの確立

論文タイトル
Xenopus laevis as an infection model for human pathogenic bacteria
論文タイトル(訳)
アフリカツメガエルを用いたヒト病原性細菌感染モデルの確立
DOI
10.1128/iai.00126-25
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Ahead of Print
著者名(敬称略)
栗生 綾乃 垣内 力 他
所属
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・分子生物学分野

抄訳

細菌の病原性とそれに対抗する宿主動物の免疫システムを理解するためには、感染モデル動物を使用した感染実験が必要不可欠である。感染実験に頻繁に利用されるマウスなどの哺乳動物は、倫理面とコスト面の問題から、多数の個体数を扱うことが困難である。本研究では、多数の個体数を扱うことが可能で、免疫システムがヒトと比較的近いアフリカツメガエルについて、ヒト病原性細菌の感染モデル動物として利用できるか検討を行った。
黄色ブドウ球菌、緑膿菌、リステリア・モノサイトゲネスの腹腔内注射により、菌量依存的にアフリカツメガエルの生存率が低下した。黄色ブドウ球菌および緑膿菌によるアフリカツメガエルの生存率の低下は、それぞれの細菌株に有効な抗菌薬を投与することで抑制された。さらに、黄色ブドウ球菌の病原性に関わるagr領域とcvfA遺伝子、ならびにリステリア・モノサイトゲネスの病原性に関わるLIPI-1領域の各欠損株は、アフリカツメガエルに対する病原性が低下していた。アフリカツメガエルにおける黄色ブドウ球菌の体内分布を検討したところ、腹腔内注射後30分の時点で、血液、肝臓、筋肉において黄色ブドウ球菌が検出され、死亡時刻までそれぞれの臓器における細菌数が維持されていた。
以上の結果から、アフリカツメガエルはヒト病原性細菌の病原性遺伝子の評価や抗菌薬の有効性評価に使用可能な感染モデル動物であると考えられる。本感染モデルは腹腔から全身へ細菌が移行する敗血症を模擬していると考えられ、敗血症における細菌と宿主の相互作用を研究する上で有用である。 

 

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