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2025/05/14

麻黄と桂皮はウイルスの侵入および複製阻害という多機序的な抗インフルエンザウイルス作用を持つ

論文タイトル
Multiple antiviral mechanisms of Ephedrae Herba and Cinnamomi Cortex against influenza: inhibition of entry and replication
論文タイトル(訳)
麻黄と桂皮はウイルスの侵入および複製阻害という多機序的な抗インフルエンザウイルス作用を持つ
DOI
10.1128/spectrum.00371-25
ジャーナル名
Microbiology Spectrum
巻号
Microbiology Spectrum Ahead of Print
著者名(敬称略)
藤兼 亜耶 他
所属
福岡大学医学部総合診療学
著者からのひと言
この研究は、麻黄湯のインフルエンザに対する二重の抗ウイルス作用機構(侵入阻害+複製阻害)を初めて明らかにし、その効果がA型・B型インフルエンザに広く及ぶことを示しました。主要構成生薬の特定により、麻黄湯は多標的・広範囲に対応可能な治療薬候補として、パンデミック対策における薬剤再開発の新たな選択肢となり得ます。

抄訳

麻黄湯は、インフルエンザウイルス感染症に対する有効性がすでに知られている漢方薬であるが、その詳細な作用機序は未解明であった。本研究では、麻黄湯およびその構成生薬による抗インフルエンザウイルス作用のメカニズムを明らかにした。麻黄湯はウイルス表面のヘマグルチニン(HA)に結合し、A型(H1N1およびH3N2)およびB型を含む複数の株において、ウイルスの細胞侵入を阻害することが判明した。さらに、ウイルスとともに細胞内に取り込まれた麻黄湯は、ウイルス複製に必須なPAエンドヌクレアーゼにも結合し、その酵素活性を抑制した。構成生薬の中でも、麻黄および桂皮がHAおよびPAの双方に作用し、麻黄湯の抗ウイルス効果の中核を担っていることが示唆された。麻黄湯は、ウイルスの侵入と複製という複数の段階を標的とする多機序的な抗ウイルス作用を有しており、インフルエンザウイルスの変異にも柔軟に対応可能な新たな治療選択肢として期待される。

 

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