抄訳
呼吸困難等の呼吸器症状の病態を理解するために,呼吸駆動(呼吸中枢からの指令によって,呼吸運動)を評価することが望ましい.呼吸駆動の評価法の1つに,呼吸筋の筋電図(electromyography: EMG)があげられる.呼吸筋EMGの強度は筋収縮の強さや動員される筋線維数を反映し,EMGのタイミングは吸気流の生成に対しての筋活動の開始や収束を示す.EMGの強度やタイミングは,呼吸負荷がかかるような呼吸器疾患の病態を把握する上で,呼吸筋の協調運動や呼吸中枢からの抑制信号を理解する上で重要となる.本論文では,4つの呼吸筋EMGの計測(皮膚処理,EMG電極貼付)と解析(EMG信号のフィルタリングと変換,吸気流量に対しての筋活動の開始や収束の同定法)について述べる.健常男性を対象に,漸増吸気閾値負荷試験を行い,本法を検証した結果,吸気負荷が高いほど横隔膜以外の呼吸筋活動の開始が早く,活動持続時間は長かった.また,吸気負荷がかかった状態における呼吸筋EMGのタイミングの変化は,EMG振幅の増加と相関が見られた.本法は臨床において呼吸筋活動を定量化し,正常状態および吸気負荷がかかった状態における呼吸筋の運動制御戦略に関する知見を提唱する.