抄訳
花成ホルモン“フロリゲン”は植物の花芽形成を促す鍵分子であり、シロイヌナズナではFLOWERING LOCUS T(FT)タンパク質がその分子実体である。FTは、花芽形成に適した環境下において葉で産生された後、葉から茎の先端部(茎頂分裂組織)へと輸送され、茎頂分裂組織内部で機能発揮する。これまでに、葉におけるFTの産生に関する多くの知見が報告されてきたが、FT輸送に関する知見は乏しく、特に茎頂分裂組織周辺におけるFT輸送機構はほとんど明らかにされていない。本論文では、シロイヌナズナ体内においてFTの局在を可視化し、茎頂分裂組織におけるFT輸送機構について詳細な解析を行なった。その結果、FTは原形質連絡(隣接した細胞間をつなぐ植物に特有の微細なトンネル構造)を介して細胞間を移行すること、並びに、低温などの環境要因に応じた原形質連絡透過性の変化がFTの細胞間移行制御に関与することが明らかとなった。