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2025/07/24

中性子構造解析と時分割X線構造解析を用いてNudix加水分解酵素ヒトMTH1の基質結合および反応機構を詳細に解明した

論文タイトル
Neutron and time-resolved X-ray crystallography reveal the substrate recognition and catalytic mechanism of human Nudix hydrolase MTH1
論文タイトル(訳)
中性子構造解析と時分割X線構造解析を用いてNudix加水分解酵素ヒトMTH1の基質結合および反応機構を詳細に解明した
DOI
10.1073/pnas.2510085122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.29
著者名(敬称略)
平田 啓介、藤宮 佳菜、中村 照也 他
所属
熊本大学大学院生命科学研究部(薬学系)機能分子構造解析学講座
著者からのひと言
これまでに合成されてきたほとんどのMTH1阻害剤は、MTH1のAsp119とAsp120に結合するため、本研究で決定した高精度なMTH1構造を基にした新たな抗がん剤の創出につながることが期待されます。また、Nudixファミリーにおいては、金属イオンの関与する酵素反応機構が長年議論されていますが、今回の研究により、MTH1 は3 つの金属イオンが関与して反応を触媒することが明らかになりました。

抄訳

ヒトMTH1は、活性酸素種によって生じた酸化ヌクレオチドを広い基質特異性により加水分解して除去する酵素であり、抗がん剤の標的としても注目されている。これまでの研究から、MTH1の基質・阻害剤の結合には、基質結合ポケット内のアミノ酸残基のプロトン(水素原子)の付加や脱離、すなわちプロトン化/脱プロトン化状態が重要であると示唆されていたが、水素原子を直接観察することの難しさから、その状態を実験的に証明するには至っていなかった。本研究では、水素原子の位置を高感度で検出可能な中性子構造解析を用いることでMTH1の基質結合ポケット内の水素原子を可視化し、Asp119とAsp120のプロトン化状態の変化が広範な基質・阻害剤結合を可能にしていることを実験的に初めて実証した。さらに、時分割X線構造解析によりMTH1の加水分解反応過程を動的に観察し、MTH1が属する大規模な加水分解酵素群であるNudixファミリーに共通すると考えられる反応機構を提案した。

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