抄訳
本研究では、ニューロメジンU(NMU)の生理的役割を明らかにするため、NMUノックアウト(KO)ラットを解析した。オスのNMU KOラットでは、野生型(WT)と比較して回し車を走る「輪まわし活動」が有意に減少していた。一方で、飼育ケージ内での全体的な活動量には変化はなかった。WTラットのオスでは血中テストステロン濃度が日内で変動し、朝に高く夜に低下していたのに対し、NMU KOラットでは1日のピークがみられず、日内リズムが消失していた。NMU KOラットにテストステロンを慢性的に投与すると、輪まわし活動はWTと同程度に回復した。また、NMU KOラットでは下垂体における黄体形成ホルモンの発現や、LH産生細胞の大きさが低下していた。脳において、NMUは下垂体隆起部に高発現し、その受容体は第三脳室上衣細胞層のタニサイトに強く発現していた。以上より、NMUはテストステロンのリズム調節を介して、自発的な運動行動、モチベーション行動の制御に関与する新規機能が明らかになった。