抄訳
認知症のない、高血圧と慢性腎臓病を有する80代男性が、急性の意識障害で受診した。患者に偏食とアルコール多飲の既往はなかった。来院時は、GCS E1V2M5、体温 35.5℃、神経学的所見に異常は認められなかった。血液検査でも意識障害の原因となるような所見はなかった。
頭部MRI検査のDWIで両側視床にわずかに高信号を認めたが、FLAIRでの信号変化はなく、ADCマップとT2強調画像では低信号だった。1か月後の頭部MRIでは、DWIでの信号変化は認めず、ADCマップ、T2強調画像、およびFLAIR画像で両側視床に高信号域を認め、両側視床梗塞と確定診断した。
脳梗塞は通常片側性であるが、視床は解剖学的な特徴から両側性に梗塞を起こしうる。その多くは、後大脳動脈のP1セグメントから分岐し、両方の傍正中視床を灌流するペルシュロン動脈に起因する。意識障害を呈する両側視床梗塞をみた場合、本疾患を鑑別に挙げ、早期診断と治療介入を考慮する必要がある。