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2025/08/26

初めて分離に成功したメタン資化性のMycobacterium属細菌、アンモニア・pH耐性を備えたメタン酸化を発見

論文タイトル
First isolation of a methanotrophic Mycobacterium reveals ammonia- and pH-tolerant methane oxidation
論文タイトル(訳)
初めて分離に成功したメタン資化性のMycobacterium属細菌、アンモニア・pH耐性を備えたメタン酸化を発見
DOI
10.1128/aem.00796-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
蒲原 宏実 大橋 晶良 他
所属
広島大学大学院 先進理工系科学研究科(工学系) 社会基盤環境工学プログラム 環境保全工学研究室
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 生命工学領域 バイオものづくり研究センター 微生物生態工学研究チーム
著者からのひと言
メタン酸化細菌は、限られた系統群に属すると認識されてきましたが、ゲノム情報からは、その多様性が広がっていることが見えてきています。今回、第三の門としてActinomycetota門のMycobacterium属細菌MM-1株を分離培養し、これまで知られていなかったメタン酸化細菌の姿を明らかにしました。本研究は、メタン酸化細菌の世界を拡張し、新たな可能性を切り拓きます。

抄訳

メタン酸化細菌は、自然由来および人為由来のメタンを酸化することで地球規模の炭素循環において重要な役割を担っている。これまでの研究では、主にPseudomonadota門、Verrucomicrobiota門の好気性メタン酸化細菌に焦点が当てられてきた。実は、40年前にメタン酸化能を有するグラム陽性のActinomycetota門に属する細菌もメタン酸化能を有すると報告されていたが、分離株も保存されておらず、続報もないことから、メタン酸化細菌群として認識されてこなかった。本研究では、ActinomycetotaMycobacterium属に属するメタン酸化細菌MM-1株を分離培養し、初めてその特徴を明らかにした。これは第三の好気性メタン酸化細菌の門の確立を意味する。MM-1株は従来のメタン酸化細菌に比べて広いpH耐性と高いアンモニア耐性を示し、新たなアンモニア耐性機構の存在を示唆する。さらに、16S rRNA遺伝子解析により、MM-1株と近縁な配列が、飲料水システムを含む多様な環境で検出されており、既知のメタン酸化細菌が生存困難な環境において重要なメタンシンクとして機能する可能性が示された。

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