抄訳
細菌の運動器官であるべん毛は約30種類のタンパク質が段階的に組み上がることで形成される。その根本に存在する専用のタンパク質輸送装置が細胞内で合成されたべん毛の部品たんぱく質を順に細胞外へ送り出す。FliP、FliQ、FliRはこの輸送装置のチャネルを構成し、べん毛軸構造構築の基部としての役割も果たす。しかし、最初に輸送される軸構造タンパク質FliEがどのようにFliPQR複合体の先端結合部位に配置されてべん毛形成が開始されるのか未解明であった。本研究ではクライオ電子顕微鏡を用いたFliPQR複合体の構造解析により、その先端にβキャップと名づけた出口ゲート構造を発見した。このβキャップは輸送開始前にこの出口ゲートを閉じた状態に保つだけでなく、FliEをべん毛形成の開始点に誘導する機能を持つことが明らかとなった。FliE6分子が次々輸送されるとβキャップは花が咲くように開き、べん毛形成が開始すると考えられる。べん毛運動は病原性にも深く関わるため、この発見は新たな抗菌剤標的探索への貢献も期待される。