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2025/08/28

細菌べん毛の形成開始を制御するべん毛タンパク質輸送チャネルFliPQR複合体先端のβキャップ構造

論文タイトル
A β-cap on the FliPQR protein-export channel acts as the cap for initial flagellar rod assembly
論文タイトル(訳)
細菌べん毛の形成開始を制御するべん毛タンパク質輸送チャネルFliPQR複合体先端のβキャップ構造
DOI
10.1073/pnas.2507221122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.34
著者名(敬称略)
筆頭著者:木下 実紀、連絡著者:南野 徹
所属
大阪大学大学院生命機能研究科日本電子YOKOGUSHI協働研究所
著者からのひと言
病原細菌のべん毛運動は病原性の発現やバイオフィル形成に深く関与します。べん毛輸送装置は細菌に特有の分子機構であり、しかも細菌の生存には必須ではないため、その機能のみを選択的に阻害できる薬剤が開発できれば、病原細菌のべん毛運動性や感染力を効果的に抑制できる可能性があります。今後、FliPQR複合体に結合してその機能を阻害する化合物を同定することで、新興細菌感染症の制御に資する新たな治療薬の開発が大きく前進すると期待されます。

抄訳

細菌の運動器官であるべん毛は約30種類のタンパク質が段階的に組み上がることで形成される。その根本に存在する専用のタンパク質輸送装置が細胞内で合成されたべん毛の部品たんぱく質を順に細胞外へ送り出す。FliP、FliQ、FliRはこの輸送装置のチャネルを構成し、べん毛軸構造構築の基部としての役割も果たす。しかし、最初に輸送される軸構造タンパク質FliEがどのようにFliPQR複合体の先端結合部位に配置されてべん毛形成が開始されるのか未解明であった。本研究ではクライオ電子顕微鏡を用いたFliPQR複合体の構造解析により、その先端にβキャップと名づけた出口ゲート構造を発見した。このβキャップは輸送開始前にこの出口ゲートを閉じた状態に保つだけでなく、FliEをべん毛形成の開始点に誘導する機能を持つことが明らかとなった。FliE6分子が次々輸送されるとβキャップは花が咲くように開き、べん毛形成が開始すると考えられる。べん毛運動は病原性にも深く関わるため、この発見は新たな抗菌剤標的探索への貢献も期待される。

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