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2025/09/08

右室中隔にリード留置後、遠隔期に左室流出路狭窄を生じた左室中隔基部肥厚症例

論文タイトル
Left ventricular outflow tract obstruction appearing in remote period of right ventricular septal pacing in patient with left ventricular septal bulge
論文タイトル(訳)
右室中隔にリード留置後、遠隔期に左室流出路狭窄を生じた左室中隔基部肥厚症例
DOI
10.1136/bcr-2024-262639
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Volume 18, Issue 8
著者名(敬称略)
伊集院 駿 他
所属
独立行政法人 国立病院機構 鹿児島医療センター
著者からのひと言
右室リード留置の際、従来は、術者が右室の形態に合わせてシェイピングしたスタイレットを用いて留置場所を選択していた。近年では、ガイディングシースを用いることで容易かつ安全に中隔にリード留置できるようになり、デバイス治療を専門としない循環器内科医にとって有り難い時代となった。半面、本症例のように中隔ペーシング後に、左室流出路狭窄が進行するケースもあり、本論文が中隔基部肥厚患者のリード留置位置を選択する上での参考になれば嬉しい。

抄訳

本症例は70歳代女性で、完全房室ブロックに対し右室高位中隔にリードを留置したデュアルチャンバーペースメーカーを植え込み後、6年目に労作時の倦怠感と呼吸困難を主訴に来院した。植込み前は左室中隔基部肥厚を認めたが、左室流出路(LVOT)狭窄や僧帽弁収縮期前方運動(SAM)はなかった。経過中に心エコーで新たにSAMと左室流出路にモザイク血流を認め、バルサルバ負荷で116mmHgの圧較差が出現した。薬物療法は無効であり、電気生理学的検査では高位中隔ペーシング時のみ圧較差が増悪することが確認された。リード抜去は困難であったため、新たに右室心尖部にリードを追加しペーシング部位を変更したところ、LVOT狭窄とSAMは消失し症状も改善、9年間の追跡でも再発を認めなかった。高位中隔ペーシングは左室中隔基部肥厚症例でLVOT閉塞を惹起しうるため、リード留置部位の慎重な選択が必要であると示唆される。

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