抄訳
海洋環境におけるプラスチック汚染は深刻な環境問題となっており、プラスチック分解能を持つ微生物の探索と応用が注目されている。本研究では、神奈川県津久井浜海岸の表層海水から、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)のモデル化合物であるエチレン-α-オレフィン共重合体を用いてHalopseudomonas aestusnigri T1L2株を単離し、完全ゲノムを決定した。
T1L2株のゲノムは約391万塩基対の環状染色体からなり、ポリオレフィンの断片化に関与する可能性のある多銅酸化酵素や、断片化ポリオレフィンの代謝に関わる酵素の遺伝子をコードしていた。また、ポリオレフィン分解産物を生分解性プラスチック(ポリヒドロキシアルカン酸)に変換する酵素遺伝子も見出された。本研究は、海洋細菌を用いたプラスチックから生分解性プラスチックへの変換という革新的な環境技術の基盤を提供するものである。