抄訳
これまでの先行研究において、小児における呼吸器ウイルスの長期検出が報告されているが、ウイルスのヒト組織内での生存期間は不明であった。本研究ではヒト初代呼吸器上皮細胞の気液界面(ALI)培養系で主要呼吸器ウイルスの複製能を評価した。その結果、多くのウイルスは平均約100日、長いものでは150~200日間の持続複製が可能であった。一方、インフルエンザウイルスやDNAウイルスは細胞死により短期間(18~66日)で複製が終了した。再感染実験でも一部で複製能が維持されていることが示された。また、IFNβの一過性分泌以外はI型IFN応答はほとんど見られず、免疫寛容的環境が長期複製を許容していることが示唆された。さらに50~60日を超える複製では、ウイルスゲノムに遺伝子変異が蓄積する可能性が生じることが示され、免疫不全宿主における長期複製が新規変異株出現の温床となりうることが示された。