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2025/09/19

腸内のポリアミンは鞭毛運動や硝酸呼吸を介して、腸管病原菌の腸管内定着を促す

論文タイトル
Intestinal luminal polyamines support the gut colonization of enteric bacterial pathogens by modulating flagellar motility and nitrate respiration
論文タイトル(訳)
腸内のポリアミンは鞭毛運動や硝酸呼吸を介して、腸管病原菌の腸管内定着を促す
DOI
10.1128/mbio.01786-25
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio Volume 16 Issue 9 e01786-25
著者名(敬称略)
三木 剛志 他
所属
北里大学薬学部・大学院薬学研究科
著者からのひと言
腸内細菌の代謝産物は、腸の健康に大きく影響を及ぼし、また、病原体の感染にも関わります。よく知られた例は、腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸であり、私たちの健康に良い影響を及ぼし、感染を防ぐことが知られています。一方で、本研究では、腸内細菌の代謝産物である腸内のポリアミンが、腸管病原菌の感染を促してしまうリスクファクターである可能性を示しました。腸内ポリアミンレベルの制御は腸管病原菌による消化管感染に対する新たな治療ターゲットになるかもしれません。

抄訳

サルモネラ属ネズミチフス菌の消化管感染では、腸管の炎症が誘導され、その炎症反応を利用することによって、本菌は腸管内に定着する。プトレシンやスペルミジンに代表されるポリアミンは、腸恒常性に関わる分子の一つであり、腸内のポリアミンの多くは腸内細菌に由来する。本研究では、ネズミチフス菌の消化管感染における腸内ポリアミンの役割を明らかにした。腸管内に感染したネズミチフス菌は、腸内のポリアミンを取り込み、その取り込まれたポリアミンは鞭毛運動や硝酸呼吸に関わる遺伝子群の発現活性に必要であった。すなわち、合成および取り込み系の機能が減弱したポリアミンの恒常性を失ったネズチフス菌変異株は著しく、マウス腸管内の定着活性が低下した。一方で、スペルミジンを含む水を自由に飲水したマウスでは、本変異株の定着活性は回復した。さらに、同様のスペルミジン供与を施したマウスでは、ネズミチフス菌野生株や共生大腸菌の腸管内定着レベルが上昇した。以上、本研究より、腸内のポリアミンは腸管病原菌の腸管内定着を活性化することが明らかになった。

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