抄訳
Pseudomonas属細菌においては、芳香族の環境汚染物質の分解能力や、低温を含む多様な環境ストレスへの優れた適応能力を有するものがしばしば報告されている。本研究では、環境汚染物質のp-ヒドロキシ安息香酸(PHBA)を増殖の栄養源として利用でき、なおかつ低温条件下(10˚C)で活発に生育可能な新規の細菌株P. migulae HY-2株をモデルとして用いて、低温ストレス条件下での芳香族炭化水素の分解過程における遺伝子調節機構について調査を行った。HY-2株のトランスクリプトーム解析の結果、低温条件下では複数種のシャペロンの発現上昇によりタンパク質の恒常性が維持され、さらに外来ポリアミンの蓄積に伴うバイオフィルム形成が誘導される一方、PHBAの分解に関わる遺伝子群の発現はほとんど影響を受けないことがわかった。本成果は、細菌を用いた汚染環境の修復技術におけるPseudomonas属細菌の有用性について、新たな知見を与えるものである。