抄訳
単施設で10年間に診断された悪性腫瘍患者患者のCorynebacterium striatum感染症51例について、臨床情報の収集および起因菌株の薬剤感受性試験と全ゲノム解析を実施した。症例のほとんどは固形腫瘍患者であり、術後腹腔内感染症、術後頭頚部軟部組織感染症、骨関節感染症が多かった。抗菌薬投与期間の中央値は25日で、経口ステップダウン治療を要する例も多かった。起因菌株は多剤耐性傾向があったが、テトラサイクリン系(92.5%)やST合剤(79.2%)の感受性は良好であり、テトラサイクリン系耐性はtet(W)遺伝子保有と関連していた。また、ダプトマイシン耐性が2例(3.9%)ありいずれもpsgA2遺伝子変異を伴っていた。コアゲノムSNP解析と入院歴調査により、7例は院内伝播の関与が示唆された。本研究は、悪性腫瘍患者においてC. striatumが多様な感染症の起因となり得る多剤耐性菌であり、抗菌薬適正使用の観点から注視すべき病原体であることを示している。