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2025/10/07

Stenotrophomonas maltophilia 臨床分離株に対するアズトレオナム–ナキュバクタムおよびセフェピム–ナキュバクタムのin vitro 効果の評価

論文タイトル
Evaluation of in vitro efficacy of aztreonam-nacubactam and cefepime-nacubactam against clinical isolates of Stenotrophomonas maltophilia
論文タイトル(訳)
Stenotrophomonas maltophilia 臨床分離株に対するアズトレオナム–ナキュバクタムおよびセフェピム–ナキュバクタムのin vitro 効果の評価
DOI
10.1128/aac.00755-25
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Ahead of Print
著者名(敬称略)
青木 渉 上蓑 義典 他
所属
慶應義塾大学医学部臨床検査医学教室
著者からのひと言
なかなか治療選択肢の少ないS. maltophiliaに対して、臨床分離株を使ってさまざまな新規抗菌薬の薬剤感受性を調べていくうちに、我が国発の新規βラクタマーゼ阻害剤であるナキュバクタムとセフェピムまたはアズトレオナムの組み合わせがある程度効果を示すことを発見しました。
病院検査室発の小さな研究ですが、臨床医を悩ませるS. maltophiliaに対する新しい治療選択肢が近い将来1つでも増えるような開発につながればと思っています。

抄訳

Stenotrophomonas maltophilia はL1βラクタマーゼ(メタロβラクタマーゼ)およびL2βラクタマーゼ(クラスA βラクタマーゼ)を産生するため、多くのβラクタム系抗菌薬に自然耐性を示し、治療選択肢が限られている。従来はST合剤やレボフロキサシンが主に用いられてきたが、近年はセフィデロコルやアズトレオナム–アビバクタムなど新規薬剤が注目されている。ナキュバクタム(NAC)はDBO系の新規βラクタマーゼ阻害剤でありβラクタマーゼ阻害作用に加え、PBP2への結合などによる抗菌活性増強効果(エンハンサー効果)を示すことが報告されている。本研究では、2012〜2024年に慶應義塾大学病院で血液培養から分離された53株を対象に、アズトレオナム(ATM)およびセフェピム(FEP)との併用効果を検討した。結果、ATM–NACおよびFEP–NACはいずれも単剤に比して有意にMICを低下させ(P<0.001)、MIC50/90はそれぞれ8/16 µg/mLおよび4/16 µg/mLであった。FEPはL1βラクタマーゼの基質であるが、FEP–NACでは活性が認められたことから、NACのエンハンサー効果が示唆される。これらの結果は、FEPやATMとNACの併用療法がS. maltophilia感染症に対する新たな治療選択肢と今後なりうる可能性を示し、さらなる研究が求められる。

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