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2025/10/07

複数のCyp51アイソザイムを持つ真菌に対するアイソザイム特異的アゾール系抗真菌薬剤の相乗効果

論文タイトル
Synergistic effects of Cyp51 isozyme-specific azole antifungal agents on fungi with multiple cyp51 isozyme genes
論文タイトル(訳)
複数のCyp51アイソザイムを持つ真菌に対するアイソザイム特異的アゾール系抗真菌薬剤の相乗効果
DOI
10.1128/aac.00598-25
ジャーナル名
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
巻号
Antimicrobial Agents and Chemotherapy Ahead of Print
著者名(敬称略)
石井 雅樹(筆頭著者と連絡著者)、大畑 慎也(連絡著者)
所属
武蔵野大学 薬学部・薬学研究所
著者からのひと言
Aspergillus属菌などによる全身性真菌症は世界で年間375万人の死者を出します。また、白癬菌による水虫などの表在性真菌症は世界人口の10%以上が罹患しており、いずれも深刻な問題です。真菌は我々人間と同じ真核生物であり、選択的に作用する薬剤の開発は困難であるため、既存薬の有効活用が今後の治療における鍵となります。本研究は、アイソザイム選択性という視点から、難治性真菌症に対して同系統薬の併用療法という新たな扉を開き、薬剤耐性菌への新規対抗策を提供すると期待されます。

抄訳

本研究では、白癬菌Trichophyton rubrumにおいて、エルゴステロール生合成経路の律速酵素であり、アゾール系抗真菌薬の標的であるCyp51の2つのアイソザイム(Cyp51AとCyp51B)の機能を解析した。遺伝子欠損株の解析から、Cyp51Bは白癬菌の正常な成長に必須である一方で、Cyp51Aはアゾール系薬剤への自然抵抗性に関わる誘導型アイソザイムであることが判明した。28種類のアゾール系薬剤の感受性試験から、フルコナゾールやスルコナゾールがCyp51Bを、プロクロラズはCyp51Aを選択的に阻害することが明らかになった。さらに、これらのアイソザイム選択的薬剤を併用することで、白癬菌だけでなくAspergillus welwitschiaeの生育が相乗的に阻害された。本研究は、異なるCyp51アイソザイム選択性を持つアゾール系抗真菌薬の併用が、病原性真菌に対する新たな治療戦略となることを示唆している。

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