抄訳
本研究では、白癬菌Trichophyton rubrumにおいて、エルゴステロール生合成経路の律速酵素であり、アゾール系抗真菌薬の標的であるCyp51の2つのアイソザイム(Cyp51AとCyp51B)の機能を解析した。遺伝子欠損株の解析から、Cyp51Bは白癬菌の正常な成長に必須である一方で、Cyp51Aはアゾール系薬剤への自然抵抗性に関わる誘導型アイソザイムであることが判明した。28種類のアゾール系薬剤の感受性試験から、フルコナゾールやスルコナゾールがCyp51Bを、プロクロラズはCyp51Aを選択的に阻害することが明らかになった。さらに、これらのアイソザイム選択的薬剤を併用することで、白癬菌だけでなくAspergillus welwitschiaeの生育が相乗的に阻害された。本研究は、異なるCyp51アイソザイム選択性を持つアゾール系抗真菌薬の併用が、病原性真菌に対する新たな治療戦略となることを示唆している。