本文へスキップします。

H1

国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2025/10/08

HSV-2 UL13プロテインキナーゼを活性化するウイルス因子の同定

論文タイトル
Identification of viral activators of the HSV-2 UL13 protein kinase
論文タイトル(訳)
HSV-2 UL13プロテインキナーゼを活性化するウイルス因子の同定
DOI
10.1128/jvi.01165-25
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology  (Online ahead of print.)
著者名(敬称略)
小栁 直人 川口 寧 他
所属
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス病態制御分野
著者からのひと言
本研究は、ウイルスプロテインキナーゼの活性化を介してウイルス増殖を制御する補因子を同定したものである。ウイルスキナーゼが宿主キナーゼと同様に、自身のウイルスタンパク質を補因子として利用し、その活性を制御する仕組みを獲得していることを明らかにした点で、学術的に高い意義を有する。本研究の成果は、今後のウイルスキナーゼ基質の同定やリン酸化の生物学的意義の解明につながることが期待される。

抄訳

これまでの研究で、HSV-2のUL13プロテインキナーゼがウイルス感染細胞内で宿主因子EF-1δをリン酸化することが報告されていたが、本研究において、UL13の単独発現では培養細胞中でEF-1δのリン酸化が誘導されないことを見出した。これにより、UL13キナーゼの活性化にはウイルス由来の補因子が必要であると仮定し、その同定を試みた。その結果、UL13とUL55またはUs10を共発現すると、UL13単独に比べてEF-1δリン酸化が著しく増強された。UL13はUL55またはUs10と相互作用し、in vitroキナーゼアッセイでも活性が上昇した。また、UL55欠損株ではEF-1δリン酸化が著しく減少し、Us10欠損株では影響が小さいが、UL55とUs10の二重欠損株ではUL55欠損株よりさらに減少した。さらに、UL55欠損株はUL13キナーゼ活性消失株と同程度にウイルス増殖性とプラーク形成能を低下させたが、Us10欠損株ではほとんど影響は認められなかった。これらの結果から、UL55は主要な活性化因子、Us10は補助的因子としてUL13キナーゼ活性を制御することが示唆された。

論文掲載ページへ