抄訳
細菌に感染するウイルスであり次世代の抗菌薬として着目されるバクテリオファージ(ファージ)の分類と標的受容体との関係を理解することは、ファージ生態学および応用研究において重要である。本研究では、13種の大腸菌ファージを生理学的特性、全ゲノム配列、尾部繊維タンパク質系統に基づいて比較した。生理学的特性に基づく分類では、宿主域評価のための細菌パネルの最適化、および量質混合データ型に適した距離指標の実装によって既報の手法を改良し、各分類法にシルエット係数解析による最適分割数の客観的評価を採り入れた。ファージ耐性株のゲノム解析と相補実験、およびリポ多糖(LPS)構造解析などによるファージ標的受容体の同定の結果、本研究のファージはLPS R-coreの異なる部位、膜タンパク質、あるいは鞭毛を標的とすることが明らかとなった。特に、LPSのヘプトースリン酸化などの微細な化学修飾がファージ認識において重要であることが示された。さらに、これら分類法による結果は極めて類似しており、新たなファージを追加すると類似度が増加したことから、各手法に互換性と一般性があることが示された。